『東京人』ってどんな人?【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」27冊目
近年増えてきた“変わり種”特集にも注目したい。最初に「そうきたか!」と思ったのは「江戸東京 犬猫狂騒曲」(2019年4月号)だ。タイトルに「江戸東京」と付けることで一応『東京人』らしさをアピールしてはいるが、要するにかわいいワンニャンで客を呼ぼうという寸法。かくいう私もまんまと買っているのだから、作戦成功ということだろう。
町田康、ロバート・キャンベル、曽我部恵一らが、愛猫・愛犬との暮らしを語る。浅草演芸ホールの看板猫、猫本専門書店「キャッツ ミャウ ブックス」の猫店員らの仕事ぶりを紹介するほか、犬猫保護団体代表や犬猫専門誌編集長も登場。さらには「犬バカ」を自任する当時の『東京人』編集長自らが誌面を飾る。ペットフードやペット保険、ペットの納骨堂ガイドなど実用情報もあれば、「江戸の猫は恋だらけ」「犬、江戸を生きぬく」といった歴史記事もある。ややムリヤリ感もあるが、ここで「江戸東京」と絡めてきたわけだ。

「偏愛文具 手書きを味わう」(2019年12月号)も東京とはあんまり関係ない。今年(2025年)は特にその手の特集が多くて、「辞書と遊ぶ!」(2月号)、「老楽(おいらく)でいこう!」(9月号)、「日記の愉しみ」(11月号)と、これまでの『東京人』ではあまり見たことのないテーマが並ぶ。が、それぞれに味があったし、「日記の愉しみ」は表紙の壇蜜だけで“買い”である。
意表を突かれたのは「進化する『物流』」(3月号)だ。一見唐突だが、労働時間規制による「2024年問題」もあり、東京という大都市において物流は生活に密着した重要課題である。その着眼の妙に、まず唸る。平安時代から現代までの物流の歴史を解説する記事は勉強になるが、個人的にはクロネコヤマトの拠点である「羽田クロノゲート」の写真ルポにグッときた。ヤマトの荷物追跡情報でよく見かけて「なんじゃそら」と思っていた羽田クロノゲートの正体を初めて知った。見学もできるらしいので、同じ誌面で紹介されていた「クロネコヤマトミュージアム」と合わせて、いつか行ってみたい。
職業柄、「出版流通の現在地。」も気になるし、「『物流』映画は社会を映す。」という記事には「物流映画」という切り口にひざを打った。取り上げられているのは『ラストマイル』(塚原あゆ子監督/2024年)、『トラック野郎』シリーズ(鈴木則文監督/第1作は1975年)、『家族を想うとき』(ケン・ローチ監督/2019年)、『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督/2020年)、『コンボイ』(サム・ペキンパー監督/1978年)など。『トラック野郎』シリーズの一部と『コンボイ』ぐらいしか見たことないが、どれも面白そうである。

