近田春夫と適菜収をつくった「どうしても気になってしまう」音楽とは?【近田春夫×適菜収】連載「言葉とハサミは使いよう」第11回
【近田春夫×適菜収】連載「言葉とハサミは使いよう」第11回
音楽家近田春夫氏の新刊『未体験白書』(シンコーミュージック)が刊行された。未発表コラム70本と、共に音楽を作ってきた仲間たちとの対話、音楽誌に残されたインタビュアー仕事まで一挙掲載。自身が解説する「近田春夫を作った洋楽100曲」に、『日本崩壊 百の兆候』(KKベストセラーズ)が絶賛発売中の作家適菜収氏は何を感じたのか? 異色のLINE対談。連載「言葉とハサミは使いよう」第11回。

■バート・バカラックと「Bond Street」
適菜:近田さんの新刊『未体験白書』が届きました。ありがとうございます。面白かったので、一気に全部読みました。私は日本のロック史やポップス史のことはよく知らないので新鮮でした。
近田:ありがとうございます。
適菜:上品とは何かとか、金は二の次とか、このLINE対談ともつながる話がたくさんありますね。「近田春夫を作った洋楽100曲」は、私が影響を受けた曲と3分の1ほど重なりました。アイズレ―・ブラザーズの「Fight the Power(Part 1 & 2)」、曲のテンポがどんどん速くなっていくのは、私はあれはわざとやっているのだと思っていたのですが、ドンカマ(リズムマシーン)がなかったからだと指摘されていてなるほどと。
近田:言われてみると、わざとというのはあり得るなぁ。俺には思いつかなかった。適菜さん素晴らしい発想ですね。

適菜:アイズレ―は真面目な感じで変なことをやりますよね。そもそもあのボーカルにあのギターという。アイズレ―にはジミヘンがいたので、アーニー・アイズレーも影響を受けて、ああいう変な形になっていったのでしょうね。そこがカッコいいのですが。
近田:うん。
適菜:ボズ・スキャッグスの項目も気になりました。以前かまやつひろしの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をYouTubeで見て、演奏はティン・パン・アレーでなかなかカッコいいのですが、ボズ・スキャッグスに似た曲があって、「なんだパクリか」と。でも、改めて調べてみたら、ボズ・スキャッグスを意識して書いた曲みたいで、謎が解けました。それでも少し微妙なところはありますが。他にも気になった項目があるので、いくつか質問があります。
近田:はい!
適菜:83番のアレサ・フランクリンの「I Say a Little Prayer」を作曲したバート・バカラックはドイツ系ユダヤ人の血をひくアメリカ人ですが、不思議な人ですね。「I Say a Little Prayer」はローランド・カークも演奏していますが、なんか変な感じで、人を引き付けます。近田さんがバカラックに注目した最初はいつですか?
近田:当初そんなに興味はなくて。特にディオンヌ・ワーウィックの「I Say a Little Prayer」の歌い方は面白くないって気がしてたのよ。最初に惹かれたバカラックの曲は「Bond Street」だけど、これがバカラックの曲と知ったのは後になってからです。バカラックっぽくないでしょ? この曲調。
適菜:私は大学生の頃、先輩からバカラックの曲が大量に入ったCDを渡され、それを聞いているうちに、頭がおかしくなりそうな気分に襲われました。
近田:和声が人工的な作りなのが多いんだよね。あと、変拍子ね。理屈で作るっていうか。(筒美)京平さんとか、鈴木邦彦さんとかバカラックをよく聴いてるよね。
適菜:「Bond Street」も、頭がおかしくなりそうな感じがあります。
近田:うん。あの曲、バカラックにしては妙に下世話なのよね。鈴木邦彦さんなんかGSの曲にあのエッセンスを入れてる。京平さんもすげーあの曲には影響受けたって言っていた。
適菜:お笑い番組のコントに使われそうな感じもありますね。
近田:俺が風見律子に書いた「恋に溺れて」も「Bond Street」っぽいかも。
適菜:不思議な気分になるといえば、64番のコモドアーズもそうです。近田さんのおっしゃるようにすごくポップで。「Nightshift」の動画を見たら、みんなニコニコして演奏しているんですよ。
近田:あの時代の、シンセがリードを取るインストものってなんか商売っ気があって好きだったけど、すぐに廃れちゃったね。
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✴︎近田春夫著の最新刊✴︎
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*表紙・口絵イラスト:近田春夫/428頁/定価3300円(税込)[/caption]
いつも未体験ゾーンに突入してきた!!
音楽家 近田春夫の半世紀超を、ここに永久保存
ハルヲフォンがデビュー50周年を迎えた近田春夫。本書はコロナ禍の真っ只中で綴った未発表コラム70本と、共に音楽を作ってきた仲間たちとの対話、音楽誌に残されたインタビュアー仕事まで一挙掲載。日本のロック史、ヒップホップ史に深く関わってきた長い旅路を俯瞰します。また、巻末では自身が解説する「近田春夫を作った洋楽100曲」企画に加えて、奇跡的に発掘された青年期~幼少期の日記も公開! 音楽と共に歩み続けてきた男の半世紀超を詰め込んだ、
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