不祥事まみれの日本生命、今度は子会社で…943件の不適切な情報取得

今年7月、日本生命保険で三菱UFJ銀行などへの出向者が内部情報604件を無断で持ち出した問題が発覚したが、今度は子会社が同種事案をやらかした。
日本生命保険の完全子会社であるニッセイ・ウェルス生命保険は11月18日、銀行に出向していた社員が出向先の内部情報を無断で持ち出していた問題の調査結果を公表した。
2019年4月から2025年4月までの約6年間、計943件の情報が2金融機関から(三井住友銀行とみずほ銀行とみられる)不適切に取得されていたと報告。
出向者が無断で持ち出した情報は、他社の保険商品情報、利率一覧表、設計書のほか、銀行の販売方針、社内評価基準、販売実績などの機密情報、さらに従業員情報も含まれていた。手口は紙媒体の持ち出しか、スマートフォンで撮影した画像データの送信と極めて古典的なもの。
これらの情報は、ニッセイ・ウェルス生命の金融機関本部担当者が営業部門内で共有し、「営業推進・営業支援策の検討」に活用していたというから開いた口が塞がらない。会議などでも堂々と共有されていたようだ。
報告書で注目すべきは、この不正が組織的な指示ではなく、現場レベルで「慣習化」していたと書いている点だ。金融機関本部担当者が出向者に情報提供を求め、出向者は「慣習的に」応じていた。報告書は「資料持ち出しにかかる出向者自身の意図や目的は認められませんでした」としている。
出向者は給与は元の会社から、業務上は出向先の指揮下という二重の立場に置かれる。「出向先のために働く」建前と、「元の会社からの情報要求」という現実の板挟みが、今回の不正を生んだ構造的問題といえる。
同社が2026年3月末までに全出向者を帰任させる決断は、銀行窓販専門会社としてのビジネスモデル自体の見直しを迫られる可能性もある。
文:BEST T!MES編集部
