「150万の大仕事」にまんまとつられ…素人デザイナー地獄の10日間の始まり【斉藤啓】
どーしたって装丁GUY 第4回
■〆切まであと5日!
この時点でもう4徹目。
ぼくはだんだん焦り始めました。作業部屋に泊まり込みでまったく寝ずに手を動かし続けているのに大量の作業が遅々として進まない。しかもキャパを超えて余計に抱え込んでしまった仕事がぼくの首を真綿のように締め上げていきます。肝心のパネルのデザインは前述の「文字」の作り方が何をどうやってもうまくいかぬまま、もはや何がわからないのかも「わからない」。状況は依然、最悪。
深夜になり社員も消え、多少落ち着いた時間帯を見計らって風景画をやっとこさ2枚描いたら気づけばもう朝、そのうちに社員さんたちが出勤してきて、また打ち合わせやら長電話やら作業やらの慌ただしい1日に放り込まれる。焦れば焦るほど残り時間が猛スピードで消えて無くなってゆく。
「これはさすがにヤバいかも…」。血の気が引く、とはまさにこのことか。
5徹目の深夜、「斉藤、大丈夫?ホントにやれそう?」と、心配そうに作業を見つめる営業のみっちゃん。東電広告の新人営業であり元々は友人である彼女。会社には迷惑や損害をかけられないけれど、フレッシュな戦力としてぼくをフックアップしてあげたい。助っ人にぼくを呼んでくれた手前、板挟みになった彼女もまた焦っていました。
「大丈夫、まだ5日ある。なんとか…しなくちゃ」
そんなぼくの言葉が言い終わるか終わらないうちに、勢いよく作業部屋のドアが開き、アルコールの匂いとともに大柄な男が乱入してきました。だ、誰!?
絵と文:斉藤啓

