統一教会、創価学会……。日本人は宗教にどのように向き合ってきたのか?【適菜収】
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第14回
■自殺と安楽死について
宗教により死後の世界の説明は違う。閻魔は冥界の王として死者の生前の罪を裁く。これは、インドにおける死者の主であるヤマが仏教に入ったものである。これに関して、昔小噺をつくったことがある。
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安倍晋三という究極の嘘つきが地獄に落ちて閻魔様に舌を抜かれたが、大丈夫だったらしい。二枚舌だったから。
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2019年2月13日、安倍は国会で「私が嘘を言うわけがないじゃないですか」と発言。その発言自体が嘘。クレタ人のパラドクスの逆バージョンか。
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小学生の頃、給食を食べる前に、指を組んでお祈りをする女の子がいた。彼女はクリスチャンだったが、当時私は「クリスちゃん」だと思っていた。「なんかかわいいな」と。
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死後の世界を考えるのが無駄だとしても、私は墓には入りたくない。できたら、海に散骨してほしい。ちなみに散骨の手続きは簡単で、安いプランなら2~3万円くらいでできる。海の中のほうが気持ちよさそうである。両親が死んだタイミングで墓じまいを考えてみてもいい。昔から少し歪んだ人たちが、立派な墓をつくってきた。ピラミッドも古墳もそう。権力の象徴、富の象徴……。そういう顕示欲も、死んだら終わりでいい。
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死の迎え方はいろいろあるが、自殺も選択肢のひとつである。私の周りでも自殺した人がいるし、「自殺したい」と相談を受けたこともある。そんな大事なことを私に相談するなよとは思うが、事情があるのだろう。私は自殺をおすすめしない。私自身も自殺するのは嫌である。しかし、どうしても自殺したいならすればいいと思う。自己決定権とかそういう話をしたいのではない。人間はやりたいことをするために生きているのだから死にたいなら死ねばいい。
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保守的な人間は自殺しないと思う。最初から絶望しているのであらためて絶望することはないし、理性を信用していないので決断に歯止めがかかる。一方、理想主義者は理想のために死んだりする。
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三島由紀夫は自殺する人間が嫌いだった。三島が死んだのは、癇癪を起こしたからだ。彼はクーデターが成功するなどと幼稚なことを考えていたわけでもなかった。三島は保守の本質を理解していたが、三島事件はそれを放棄したものだった。

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大学生の頃、日向君という同級生がいた。小柄でケミカルウォッシュのジーンズを穿いていた。彼はためいきをつきながら「死にたい」とよく言っていた。あるとき「ああっ!」と大きな声を出したので、「どうしたの?」と聞くと、中学生のときの失敗を急に思い出したと言う。彼もまた、考えても意味がないことを考えてしまう人間だったのだろう。夏休みが終わると、同じ学部から自殺者が出たという噂が流れた。そして日向君が授業に来ることはなかった。
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こういうとき人は少し優しくなる。同じ授業を受けていたやつらが「自殺したのは日向だろ。少し暗かったけどいいやつだったよな」「もっと話をして悩みを聞いてやればよかったな」「実家は医者だろ。両親もつらいだろうな」「少し落ち着いたら、みんなで墓参りに行こうか」と言い出した。その2日後に日向君が授業に現れた。風邪をひいていたとのこと。
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現在、子供の自殺が増えている。小中高生の自殺者数は、令和6年では527人と、統計のある昭和55年以降で最多となっている。子供が「がんばっても無駄だから死ぬ」と言うなら、「そんなことないよ」と答えるが、50を過ぎた男が「がんばっても無駄だから死ぬ」と言うなら、「そりゃそうだよね」と同意せざるを得ない。
文:適菜収
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