急須でお茶を入れる魅力は
「目で見る美味しさ」

K さきほど、急須につける“茶こし”を作っているのを拝見したのですが、とても細かい作業で驚きました。韓国では僕の子どもの頃には、“お茶はティーバッグ”というのが家庭には深く浸透していました。逆に最近になって、ティーバッグではなく、茶こしを使ってお茶を飲むのが広がっています。日本では長年、急須に茶葉を入れて、お茶を飲むスタイルが続いています。でも、ペットボトルのお茶を飲む人も増えている。手軽で便利という商品が指示されるなかで、職人として、強くこだわるのはどんなところですか?
清水 日本には緑茶と言っても、いろいろな産地があるし、加工法によって、深蒸し茶、煎茶、玉露などの種類があります、そういうそれぞれのお茶に合わせた茶こしというものが必要なんです。しかし、やっぱり使いやすい茶こしを求める人たちはたくさんいます。それを否定するつもりもないし、使いやすさというのも大切なポイントですから。ただ、急須でお茶を煎れて飲むという行為は、のどを潤すだけの行為ではないはず。温かく美味しいお茶で心を和ませられる。そこには目で見る美味しさがあるからだと思うんです。
K 目で見る美味しさ!

 

清水 急須やお茶碗など視覚に訴える美しさというのも美味しさのひとつなんじゃないかと思うんですよね。やっぱり、粘土で作ったとても綺麗な茶こしで煎れたお茶は「見るだけでも、すごく美味しそうだよ」って、感じてもらえるような急須が求められているんじゃないかと思っているんですよね。

K 今のお話を聞いていて思い出したんですが、今、世界的にアナログレコードのブームが広がっている運です。どう考えても、レコードに比べたら、CDやダウンロードできる音源のほうが、入手しやすいし、扱いも簡単。ダウンロードした音源なら、スマートフォンなどに入れて、どこへでも持ち歩ける。だというのに、アナログレコードで音楽を聴きたいという人とが増えているんです。
清水 そうなんですか。

 

K 実は僕もアナログレコードが好きで、家でお酒を飲みながら、レコードを聞くんです。20分するとA面が終わり、今度はB面を聞くためには、立ちあがり、レコ-ドを裏返し、B面をセットして、レコード針を落とさなくちゃいけない。CDならずっとエンドレスで聞くことも可能です。でも、このアナログレコード特有の面倒、手間もまた音楽鑑賞の楽しみになる。そういう音楽を聞く以外の行為も含めた、時間を求める人たちが増えているなと思うんです。だから、急須でお茶を飲む、目で美味しさを味わうというのと、アナログレコード人気が似ているような気がするんです。
清水 そのひと手間が新しい世代には新鮮に感じられ、それを求めるのかもしれませんね。

K そういう時代の流れになっている気がするんですよね。今後はどんな作品を作っていきたいですか?
清水 伝統的な作品となると、和と考える方が多いかもしれません。でも、僕は和とモダンを兼ね備えた器が求められているように思っています。和だけでもなく、モダンさだけでもなく、両方が融合したものを提供していかなくちゃいけないなと。今後も僕は急須を柱にしたモノづくりをしていきたいんですよ。僕は、家族団らんという言葉が大好きで、それが一番今の家庭に必要なものだと思っています。日本の文化では食卓を囲んでご飯を食べたあと、急須で煎れたお茶を飲みながら、今日あった出来事を話し合うというのが家族団らんだったと思うんです。でも、今はそういう家庭も少なくなってきました。
K そうですね。
清水 そういう家族団らんをもう一度復活させたいと思っています。その時に萬古焼の急須がその小道具になれるはず。そういう萬古焼を作り、残していくという気持ちで作りたい。新しい人たちの考えを吸収しながら、あらゆる世代の人たちが共にお茶が飲めるような温かい急須を作っていきたいです。