習近平中国がトランプ米国をしのぐ日。<br />「チャイナリスク2017」軍事的衝突の行方。<br />中国専門ジャーナリストが予測する未来シナリオ《第2回》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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習近平中国がトランプ米国をしのぐ日。
「チャイナリスク2017」軍事的衝突の行方。
中国専門ジャーナリストが予測する未来シナリオ《第2回》

中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」

 

絶対に避けたい「赤い帝国」の世界支配

 

 五つ目の最後のシナリオは、習近平を中心とした赤い帝国が米国をしのぐ国際社会のルールメーカーとなり、世界の三分の一から半分が中華秩序に支配される可能性である。これは日本にとって最悪の、絶対に避けたい近未来である。

 習近平はめぼしい政敵をすべて失脚させ、共青団改革を行い、南シナ海、東シナ海における軍事行動を通じて軍権をしっかり掌握し、軍権に裏付けられた強い共産党体制を確立し、政治局常務委員制と引退年齢を廃止し、長期独裁体制を打ち立てて「二つの一〇〇年計画」実現に向かって辣腕を振るってゆく。歯向かう者、意義を唱える者は、強烈な治安維持力・軍事力で抑えつける。習近平は後に中国共産党中興の祖と呼ばれるようになるかもしれない。

 南シナ海は中国の実効支配が確定し、米国の影響力はアジアにおいて完全に排除され、米中G2時代、あるいは日米・中ロの新冷戦構造という軍事的緊張時代が始まるかもしれない。ASEANを含むアジアでは西側民主主義ではない中華秩序、ルールが中心的価値観となり、人民元を基軸通貨としたアジア・シルクロード経済圏が確立し、国家資本輸出主義と銘打った、中国式バブル経済を周辺に輸出することで、当面の経済危機を乗り越えようとする、という可能性だ。

 日本は米国と中国の緊張の間にあって、地政学的にいちばん軍事的リスクを負いやすいポジションに置かれる。世界大恐慌というような厳しい経済条件が重なれば、本当に米中戦争の危機は訪れるかもしれない。EUは経済的にも国際政治的にも弱体化し、中国におもねる一方で、国力の弱まった米国はアメリカファースト主義を貫き、日本の尖閣諸島が軍事力でもって中国に奪われようとも、見て見ぬふりをする。日本は自国の領土と領海を大きく失い、経済の活力を奪われ、中華秩序の一員として中国に従順にならざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。

※話題の書『赤い帝国・中国が滅びる日』本文一部抜粋。

 

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。

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