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若者と年寄りはどこがどう違う?【森博嗣】新連載「道草の道標」第6回

森博嗣 新連載エッセィ「道草の道標」第6回

 

【爽やかな秋風に誘われて】

 これを書いているのは9月初め。庭園の樹々の間を涼しい風が吹き抜け、空はまだ見えないけれど、紫外線も赤外線も可視光もこぼれ届く。朝顔や紫陽花が咲いているし、団栗も毬栗も落ちてくる。落葉も始まっていて、たった今、エンジンブロアを背負って掃き掃除をしてきたばかり。そうそう、奥様がアトリエとして使っているサンルームの修繕工事も始まった。

 相変わらず、庭園鉄道に毎日乗り、ときどきヘリコプタを飛ばし、戦車を走らせ、それからクルマのボンネットを開けて覗き込む。

 夜はだいたいドラマか映画を見ている。イギリスかフランスのものが面白い。しばらく使っていた新しいスマホも、もう飽きてしまい、ずっと書棚に置いたまま。工作室では、エンジンで発電して走る機関車、スチームエンジン、それからジャイロを制御するサーボシステムなどに取り組んでいる。

 さて、こんな質問をいただいた「年々、歳を取るごとに死について考えることが多くなります。今あるすべてが消えてしまうと思うと、とても怖くなります。森先生は死についてどのようにお考えでしょうか? また、死に対しての恐怖などはありますか?」

 死について考えることはあまりないけれど、あと何年かなと、生きられる期間については想像するし、いつ人生が終わっても良い、と考えている。恐怖というものはない。子供のときから、いつか死ぬことはわかっていたから、当時は恐怖を抱いたが、今はほぼない。これまでの人生でその覚悟を少しずつ積み上げてきた。痛いとか苦しいとか、そういうのはご免だが、そのあたりも、だんだん神経が鈍くなってきたし、鎮痛剤とかを打ってもらえるだろう、と期待している。延命はしたくない。この世に未練というものもなく、そこそこ楽しめたし、予想以上に面白い人生だったと思っている。

 子供の頃のように、持続できず三日坊主でも、誰からも文句をいわれないのは、歳を取って勝ち得た特権かもしれない。そう、「大人」というのは、つまり誰からも文句をいわれない人のことなのだ。あと、自分が死ぬことをちゃんと想定できるのも、大人の資質として重要なものかも。大人のこの定義が、今のところ一番もっともらしい。

 

キャラクタのおもちゃを沢山持っているが、自分で買ったものはほとんどなく、ほぼすべて友人やファンの方々からのプレゼントだ。こういうものが大好きな人だと思われているフシがある。否定したことはないし、大いに肯定したこともないのだけれど。

 

文:森博嗣

※隔週月曜日午前8時配信予定

 

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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