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「トランプvs習近平」の戦争は勃発するか?
「チャイナリスク2017」の暴発はあるのか?
中国専門ジャーナリストが予測する未来シナリオ《第1回》

中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」

 権力闘争の末、党内のアンチ習近平派の意見が周到に取りまとめられ、バブル崩壊などの経済問題や外交失策の責任などを理由に、党大会前後に行われる政治局拡大会議などで、党中央の総意という形で引退する。習近平が経済・外交政策の失敗の責任をとる、という形にすることで、本来中国が取り組まねばならない痛みを覚悟した経済改革に踏み込めるだろうし、また外交関係も修復されることで国際社会もそういう中国の経済改革に比較的協力的になれるだろう。

 このときに現行の政治局常務委員全員がそろって引退し、指導部の若返りがはかられることになるかもしれない。そうすると共産党は今までの集団指導体制を維持することになり、形式上、共産党体制は存続する。ただ、指導部が一斉に一九六三年生まれ以降、つまりポスト習近平と噂される胡春華や孫政才の世代に若返ると、中国はおそらく今までの中国とは全く違う価値観が台頭してくるのではないか、といわれている。

胡春華

 

孫政才

 六三年生まれ以降の特徴は文化大革命の記憶がないことと、八九年の天安門事件に至るまでの民主化運動時期と青春期が重なっているということ。学生時代に胡耀邦が進めた民主化に共鳴したことも、天安門事件の弾圧のときに白い花を胸につけて抗議した経験もある世代である。こうした経験を経て官僚・政治家を目指した若者たちの価値観は、それ以前の官僚・政治家とは根本的に違うといわれている。

 彼らの世代から、ゴルバチョフのような政治改革者が出てくる可能性が一番強い、と見られている。もし、そうなれば、それは新しい中国政治のスタートといえるかもしれない。

 ちなみに現在、党政治局・長老の意見を取りまとめて習近平に引導を渡せるだけの実力を持つ政治家は王岐山くらいしか私は思いつかない。習近平の盟友という形で政権を支えてきたが、任志強事件後、もし二人の関係に変質が起きていたのであれば、王岐山が習近平独裁体制にストップをかける役割を担うかもしれない。

王岐山

 今の習近平政権に見られる中国の北朝鮮化現象に歯止めがかかり、多極外交に立ち返り、段階的な政治改革を伴った経済の市場化、自由化が進むことで中国の本来持っている経済ポテンシャルが引き出されるかもしれない。経済のハードランディングそのものは避けられないとしても、比較的短期間で回復できる見込みがあるのではないだろうか。

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