ビートルズよりAKB48の活動期間は長い。「時間が過ぎるのが早くなった」は本当か?【近田春夫×適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ビートルズよりAKB48の活動期間は長い。「時間が過ぎるのが早くなった」は本当か?【近田春夫×適菜収】

【近田春夫×適菜収】連載「言葉とハサミは使いよう」第9回


ビートルズの活動期間が10年だったのに対し、AKB4820年間に及ぶ。今の時代の20年と昔の20年は同質のものなのか? 20世紀末の時点で、音楽はいずれタダになると予言していたミュージシャン近田春夫氏と近代大衆社会の末期症状を描き出した『日本崩壊 百の兆候』(KKベストセラーズ)が絶賛発売中の作家適菜収氏による異色対談の後編。新連載「言葉とハサミは使いよう」第9回。


横浜スタジアムでプロ野球交流戦DeNA対西武の試合後、ライブを行ったAKB48(2025年6月17日)

 

◾️人類の終末は意外と早い

 

適菜:変な政治家がいろいろ出てきていますが、目新しさはない。結局、第二の安倍晋三、第二の橋下徹なんです。腐り方は同じです。

近田:政治の世界は、縮小再生産の時代に入ったのかもね。

適菜:だから、政治に関しては突っ込みどころも同じようなものになるし、時評を書くのも飽きてしまいました。

近田:世の中、政治家のみならず、何もかもが小粒になってきていると思うのよ。ただ、この感覚には、時間の経過も関係あるのかなと考えていて。

適菜:どういうことですか?

近田:齢を取ると時間が過ぎるのが速くなるっていうのは、よく聞く話じゃないですか。心理学では「ジャネの法則」と呼ぶそうだけどさ。

適菜:フランスの哲学者ポール・ジャネが発案したものですね。

 

ポール・アレクサンドル・ルネ・ジャネ(1823ー1899)。フランス・パリ出身の哲学者、作家。

 

近田:時間に対する体感が短縮するのに応じて、物事のスケール感も縮小するのかなあ、なんて。

適菜:なるほど。

近田:俺は今74歳だけど、死が近づいてくると、一日一日が短くなる。ひょっとすると、これって、個人だけじゃなくて、人類全体に対して敷衍できる法則なんじゃないかと思うのよ。だって、自分よりずいぶん若い人間と話していても、「最近、時間が過ぎるのが速くなりましたね」って言うんだよ。ということは、人類という集団そのものが、老境を迎えているんじゃないかって。

適菜:人類の終わりが近いということですか?

近田:特に、コンピューターが発展して以来、人類は、いろいろな意味で先が見えやすくなったじゃない? 1970年の大阪万博では、みんな、薔薇色の未来を信じていた。でも、今開催されている大阪・関西万博を見ても、将来に対して手放しで楽観を抱いている印象は微塵もない。

適菜:運営も不手際ばかりだし。

近田:俺らが子どもの頃はさ、少年雑誌の新年号は、小松崎茂の描いた未来像なんかが巻頭を飾っていた。自動車が空を飛んでたりしてさ。今の万博でも、「空飛ぶクルマ」と称する乗り物が披露されているけど、あれ、単にでっかいドローンみたいなもんじゃん(笑)。かつて夢みた空飛ぶクルマとは別物だよ。

 

SFメカニック・ファンタジー 小松崎茂の世界』小松崎茂著(ラピュータ)

 

適菜:維新がやっているのは全部このパターンですよ。大風呂敷を広げて、世の中を騙す。

近田:もはや、未来に関しては否定的要素ばかりが論じられるようになってきた。みんな、人類の終末は意外と早いんじゃないかなと考えてるんだろうと思う。人類全体が、ジャネの法則を共有している。

適菜:日本はこの30年で完全に破壊されました。「日本スゴイ」なんて言ってる情弱もまだいますが、すでに多くの人が日本が取り返しのつかないところまで来ていることに気づいている。

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適菜収 著『日本崩壊  百の兆候

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近田春夫×適菜収/下井草秀

ちかだ はるお×てきな おさむ/しもいぐさ しゅう

近田春夫(ちかだ はるお)

音楽家。1951年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。1975年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。その後、近田春夫&ビブラトーンズ、ビブラストーン、President BPM名義でも活動する一方、タレント、ラジオDJ、CM音楽作家、作詞家、作曲家、プロデューサーとして活躍。現在は、バンド「活躍中」、ユニット「LUNASUN」のメンバーとしても活動する。文筆家としては、「週刊文春」にJポップ時評「考えるヒット」を24年にわたり連載。著書に『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』『グループサウンズ』(ともに文春新書)など。最新刊は宮台真司氏との共著『聖と俗  対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)。

 

適菜収(てきな・おさむ)

作家。1975年山梨県生まれ。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム近代的人間観の超克』(文春新書)、『安倍でもわかる政治思想入門』、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』、『国賊論 安倍晋三と仲間たち』、日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』『日本をダメにした新B層の研究(以上、KKベストセラーズ)、『ナショナリズムを理解できないバカ』(小学館)、最新刊『コロナと無責任な人たち』『安倍晋三の正体』『自民党の大罪』(祥伝社新書)など著書40冊以上。最新刊は『日本崩壊  百の兆候』(KKベストセラーズ)。「適菜収のメールマガジン」も配信中。https://foomii.com/00171

 

下井草 秀(しもいぐさ しゅう)

1971年宮城県生まれ。エディター/ライター。音楽、映画、書籍といったカルチャーに関する記事を「TV Bros.」「POPEYE」などに寄稿。また、照山紅葉(秦野邦彦)との「ダミー&オスカー」、川勝正幸との「文化デリック」としてユニット単位でも活動する。これまでに構成・執筆を手がけた単行本に、細野晴臣・星野源『地平線の相談』(文藝春秋)、横山剣『僕の好きな車』(立東舎)、ジェームス藤木『ジェームス藤木 自伝』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、近田春夫『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトルモア)、同『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』『グループサウンズ』(文春新書)などがある。取材・構成を行った最新刊は、宮台真司・近田春夫『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)。

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