【緊急提言】国民全員に「高機能マットレス」を配れ!〜国民の睡眠不足対策は、単なる寝具政策ではなく「国家戦略」そのもの【林直人】

第3章
「眠れぬ日本が生む“病のパンデミック”」――睡眠改善こそ最大の予防医療
第2章で提示された「マットレス革命」は、単なる寝心地の改善では終わらない。ここで問われるのは、眠りの質がいかにして病の発症を食い止め、社会全体の疾病負担を劇的に減らすのかという核心である。
実際、現代日本で蔓延する主要な生活習慣病――心疾患、脳卒中、糖尿病、うつ病、腰痛。その多くの背後には「眠れぬ夜」が潜んでいる。つまり、睡眠改善は“医療費爆発”を食い止める国家的ワクチンとなり得るのだ。
◾️「不眠が作り出す“体内炎上”」――炎症・ホルモン・自律神経の三重破壊
睡眠不足はただの“だるさ”ではない。科学が突き止めたのは、全身性の慢性炎症という“体内火災”だ。炎症性サイトカインが暴走し、動脈硬化を進め、心臓と脳を蝕む。
さらに、ホルモン分泌の破壊。
本来なら睡眠中に分泌される成長ホルモンやメラトニンが激減し、身体の修復機能がストップする。その一方で、ストレスホルモン「コルチゾール」が暴走し、血糖値を上げ、血圧を押し上げる。
極めつけは、自律神経の狂気。
本来休むはずの夜に交感神経が暴れ続け、血圧は跳ね上がり、心臓は過労死寸前。これが“眠らない日本人”の体内で日常的に起きている惨状である。
◾️「睡眠不足=慢性疾患の温床」――医療費を食い尽くす悪魔の連鎖
こうした生理学的破壊は、主要な国民病を次々と生み出す。
・糖尿病:インスリン抵抗性の亢進。薬代と合併症で一生涯コスト数千万円。
・高血圧・心疾患:発症リスク1.66倍。脳卒中や心筋梗塞に直結。
・うつ病:不眠は発症の「点火スイッチ」。経済負担は年間2.7兆円。
・腰痛:マットレスで改善可能な国民病。損失額は2〜3兆円。
これらはすべて睡眠不足が“上流の原因”となって発火する。
つまり、マットレス配布は単なる寝具政策ではなく、国家的な医療費削減プロジェクトである。
◾️「数字が示す眠りの効果」――リスク低減を冷酷にモデル化
私が目をつけるのは、疫学データが突きつける冷酷な数字だ。
・循環器疾患:睡眠6時間未満でリスク1.66倍 → 介入でその過剰リスクの50%削減。
・糖尿病:睡眠改善で新規発症抑制+既存患者の重症化防止。
・うつ病:睡眠の質改善で発症率を有意に低下。
・腰痛:体圧分散効果で直接的に軽減、医療費+労働損失を大幅削減。
日本の医療費の約19%を占める循環器系疾患、2.7兆円の経済損失を生むうつ病、3兆円規模の腰痛コスト――その全てに眠りが介入できる。
◾️「眠りこそ最強の国民医療」――マットレスは薬より効く
医薬品は特定の疾患しか治せない。しかし、睡眠改善は同時に複数の病気のリスクを削ぐ“万能ワクチン”である。
薬ではなくベッドが、処方箋となる時代が来る。
この事実が示すのはただ一つ・・・「眠り直せ、日本」。
眠れぬ夜を救うことが、病を減らし、医療費を削り、国家を再生する。
そして、その切り札は、国家が配る一枚のマットレスに他ならない。
この分析から導き出される重要な点は、睡眠介入が持つ「ポートフォリオ効果」である。
単一の介入策(睡眠の質の改善)が、それぞれ異なる病態生理を持つように見える複数の主要な疾患群(循環器、代謝、精神、筋骨格)に対して、同時に、かつ並行してリスクを低減させる。
これは、疾患ごとに個別の予防プログラムを実施するよりも、はるかに効率的で費用対効果の高い公衆衛生アプローチである可能性を示唆している。
睡眠を「健康のインフラ」と捉え、その基盤を強化することは、国民全体の健康水準を底上げし、将来の医療費負担を抑制するための、極めて強力なレバレッジポイントとなりうるのである。