「ジャングリア」の結末は“地域破壊”か? 欺瞞の運営陣に弄ばれ、〝ハリボテ〟コンセプトに振り回される「沖縄の未来」【林直人】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「ジャングリア」の結末は“地域破壊”か? 欺瞞の運営陣に弄ばれ、〝ハリボテ〟コンセプトに振り回される「沖縄の未来」【林直人】

ジャングリア沖縄

 

 虚構のコンセプト、欺瞞の運営、そして公的資金の投下――。

 本レポートが暴いたのは、ジャングリア沖縄というプロジェクトが、単なるテーマパークの失敗ではなく、沖縄全体を巻き込む“観光詐欺モデル”であるという冷厳な事実である。

 この構造は、いま確実に地域と税金の信頼を侵食しつつある。

 

◾️鮮明になった「三つの地雷」

 

 分析の結果、以下の三つの地雷が明らかになった。

 

1.  構造的ミスマッチという“詐欺設計”

 ジャングリアは、返済ありきで“11万人来場という絵空事の目標を掲げた。

 だが、実際の処理能力はたった数千人。

 来場者を満足させる構造など、最初から存在していない。

 これは設計ミスではない。意図的な欺瞞だ。

 

2.  プレミアムパスという“差別装置”

 この設計上の欠陥を収益化する装置が「プレミアムパス」。

 乗れる者と乗れない者を明確に分断することで、混雑=課金動機に転化。

 テーマパークの顔をして、実態は“混雑ビジネス”という冷酷な分断経済。

 その代償は、満足度の崩壊とインフルエンサーの地雷化である。

 

3. 税金投入の正当性が消し飛ぶ融資構造

 このハリボテに、政府系金融機関が主導して366億円の資金を注いだ。

 しかも、名目は「サステナビリティ」。

 社会的にも経済的にも持続不能なこのビジネスに、“持続可能”のハンコを押した者の責任は、極めて重い。

  もはやこれは「過大な来場目標能力不足不満の課金公的支援」の自作自演型破綻スキームである。

 

◾️“事業の失敗”で済ませるな! ステークホルダー全員が問われる責任

 

 この高リスク構造を放置すれば、やがて沖縄そのものが観光の墓場と化す可能性がある。

 関係者全員が、もはや“無関係”ではいられない。

 

◾️運営会社(刀/ジャパンエンターテイメント)へ警告したい

 

 現実を見ろ。過大集客など夢物語だ。収容能力に見合った入場上限を即刻導入せよ。

 プレミアムパスは“必需品”ではなく“贅沢品”に戻せ。これ以上、客を分断するな。

 乗れない客の不満を吸収する“無料コンテンツ”を今すぐ増設しろ。

 

◾️金融機関(商工中金・沖縄公庫・琉球銀行ほか)へ警告したい

 SLLの名に恥じない厳格なモニタリングを開始せよ。「体験ゼロ」の客割合を毎月報告させろ。

 今後の観光投資では、環境だけでなく、社会的・経済的健全性も融資基準に組み込め。

 

◾️公的機関(沖縄県)へ忠告したい

 ネガティブ口コミの“スピルオーバー”は既に始まっている。沖縄観光全体の評価が危ない。

 今後の観光開発には、“満足度の裏取り”を条件に許認可を与える厳格な制度設計を導入せよ。

 

 最後にーーこのまま沈めるか、転換するか

 ジャングリアの挑戦が成功すれば――という淡い期待は、もはや通用しない。

 問題は、「失敗したときの損失」が一企業の損失に留まらず、沖縄県の観光ブランド、そして税金の信頼性そのものを直撃するということだ。

  これは“観光ビジネス”ではない。

 日本の政策金融と地方経済を巻き込んだ、巨大なハイリスク投機である。

 すべての関係者は、この現実からもう逃げてはいけない。

 

文:林直人

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林直人

はやし なおと

起業家・作家

1991 年宮城県生まれ。仙台第二高等学校出身。独学で慶應義塾大学環境情報学部に入学(一般入試・英語受験)。在学中に勉強アプリをつくり起業するも大失敗する。その後、毎日10 分指導するネット家庭教師「毎日学習会」を設立し、現在に至る。毎年100 人以上の生徒を指導し、早稲田・慶應・上智を中心に合格者を多数輩出している(2021 年早慶上智進学者38 名・7/20 時点)。

著書に『うつでも起業で生きていく』(河出書房新社)、『人間ぎらいのマーケティング人と会わずに稼ぐ方法』(実業之日本社)などがある。

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