「出発の歌」などで知られる歌手、上條恒彦さん(85)に訃報。俳優、声優などマルチに活躍した

ヒット曲「出発(たびだち)の歌」などで知られる歌手で俳優の上條恒彦(かみじょう・つねひこ)さんが7月22日に老衰のため長野県内の病院で死去したことが1日、分かった。85歳。長野県出身。
葬儀・告別式は、親族のみで行った。喪主は妻・悦子(えつこ)さんで、故人の遺志により、お別れの会は行わないという。
昨年11月には、在住の長野県で行われた映画「シンペイ 歌こそすべて」の試写会に出席。自身が担当したエンディングテーマを歌うなど元気な姿を見せていたが…昨年末に誤嚥(ごえん)性肺炎となり、一時危篤状態に。
今年1月、都内で行われた公開記念舞台あいさつもリハビリのため欠席した。生歌唱を披露する予定だったが、かなわず手紙で「皆さまの前で歌えないことが残念でなりません」とつづっていた。
その後も復帰を目指して懸命にリハビリに励んでいたが、ついにかなわなかった。
上條さんは1962年に歌手活動を開始。
1969年に「雨よ降れ」でデビューし71年に小室等(81)率いるフォークグループ「六文銭」と組んで歌った「出発の歌」が70万枚を売り上げる大ヒットとなり、同年の世界歌謡祭でグランプリを獲得。
72年にNHK紅白歌合戦に初出場し、高校の音楽の教科書にも掲載された。そのほかヒット曲には時代劇ドラマ「木枯し紋次郎」の主題歌「だれかが風の中で」などがある。豊かな声量が持ち味で「ハイリ ハイリフレ ハイリホ~」のフレーズでおなじみの丸大食品CMソングも人気に。
ひげと眼鏡の風貌で親しまれ、最近では俳優や声優としても活躍した。舞台では「ラ・マンチャの男」に77~2023年の最終公演まで、牢(ろう)名主の役で948回にわたって出演し、主演の松本白鸚(82)を支え続けた。
他にも「屋根の上のヴァイオリン弾き」や「マイ・フェア・レディ」などに長年出演し、存在感を発揮していた。さらに、NHK大河ドラマ「秀吉」や映画「男はつらいよ 寅次郎子守唄」などにも出演。そして、ドラマ「3年B組金八先生」では、ひげがトレードマークの社会科教諭役で作品を盛り上げた。
アニメ「紅の豚」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品の声優も務め映像、舞台、アニメと幅広いジャンルで輝いていた。
文:BEST T!MES編集部