「あなたとは他人だから」と母に…AV女優と家族との折り合い【紗倉まな×神野藍 対談第3回】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「あなたとは他人だから」と母に…AV女優と家族との折り合い【紗倉まな×神野藍 対談第3回】

【紗倉まな×神野藍】新刊同時発売記念〈対談全4回〉

紗倉まなさんと神野藍さん

 

 AV女優兼作家の紗倉まなさんと、元AV女優で文筆家の神野藍さんの対談、第3回。

 2人の縁を明かした第1回、愛犬トークで盛り上がった第2回に引き続き、今回の話題は「家族」。ともに20256月に発売した、紗倉さんのエッセイ集『犬と厄年』(講談社)でも、神野さんのエッセイ集『私をほどく AV女優「渡辺まお」回顧録』(KKベストセラーズ)でも、自身と家族の関係性について触れている。AV女優としての自分と、家族との折り合い方とは。

 

◾️実家には5年帰っていない

 

神野藍(以下、神野)「私、紗倉さんのお母様がめっちゃしゃべるっていう話にすごいうなずいちゃって」

 

紗倉まな(以下、紗倉)「あ、神野さんもですか!?」

 

神野「うちの母親もそうなんですよ。脱線し始めたら止まらなくって」

 

紗倉「本を読んでる感じだと、冷静沈着なお母様なのかと思ってました」

 

神野「全然です。パワフルで、永遠思春期みたいな母親です。私の学校行事に来ては私の友達と仲良くなる、みたいな。逆に父親は頑固で、オヤジ、って感じです」

 

紗倉「『私をほどく』でお兄様の話とかも書かれていたじゃないですか。子どもって、家庭内のバランスを取らざるを得ないというか」

 

神野「そうですね、自分がどこに味方すればいいのか……っていうところで。私は下だったので、余計にいろいろ見ちゃうというか。こうやると怒られないんだ、こうやると親は困らないんだみたいなことを気にしてしまうタイプの子どもだったのかなと思っていて。うちははたから見れば絵に描いたような仲良い家族だったと思うんですけど、今思い返せばいろいろあったなぁ、って。そういう経緯もあって書いてます」

 

紗倉「お兄様も優秀で、神野さんもほとんど怒られたことなく。兄妹ともに手のかからない子どもだったんですかね」

 

神野「それだったから余計、AVデビューしたのを話した瞬間に、落差が……」

 

紗倉「想定外すぎますよね(笑)」

 

神野「今も、家族とは折り合いがついてなくて……母親とはけっこうついてるんですけど」

 

紗倉「話し合ったりはしたんですか?」

 

神野「いや、全然話し合ってなくて。5年帰ってないんです。徐々に徐々に、時間で解決してってるって感じがありますね。私も言いたいことは言ったし、謝らないといけないことも謝ったし、もうどうすることもできないから、あとはボールを投げるじゃないですけど」

 

紗倉「ちょっと寝かせる期間が必要ですよね。書いたものは、ご家族は読んでいるんですか?」

 

神野「この本に関しては、母親に言ったんですよ。向こうとしては、応援はしたい、けど受け入れられる話ではない、手放しに応援はできない、ぐらいの気持ちで。今回もAV女優だった頃の話をメインで書いていて、今後どこへ行っても元AV女優っていうのがついて回る、っていうのが、やっぱ母親にとっては苦しい。から、今後筆一本で認められるようになったら、その時は何でもする、って感じなので。私も私でいろいろ考えてるように、母親も母親で立ち止まらず考えてるんだなっていうのがわかって」

 

紗倉「それは逆を言えば、たとえばこの先、母親の納得するような、って言ったら変かもしれないですけど、別のジャンルの作品を作り出さなきゃいけないな、っていう強迫感があったりするんですか?」

 

神野「若干やっぱりありますね。心のどこかで、子どもの頃のいい子ちゃんが抜けてないのはもちろんあるので。ふとした瞬間にやるせなさというか、また私こうやって考えてしまうんだ、みたいな。AV女優になった時ぐらい、バーンとはねのけられればいいのに、また考えるようになってしまったなっていうのはあるんですけど。でもここまで驚かせてきたので(笑)、これ以上驚くことはないんじゃないかって、構えていきたいなと思いますね」

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作家・鈴木涼美さんも絶賛!衝撃エッセイが誕生

 

 

 

 

✴︎目次✴︎

 

はじめに

#1 すべての始まり

#2 脱出

#3 初撮影

#4 女優としてのタイムリミット

#5 精子とアイスクリーム

#6 「ここから早く帰りたい」

#7 東京でのはじまり

#8 私の家族

#9 空虚な幸福

#10 「一生をかけて後悔させてやる」

#11 発作

#12 AV女優になった理由

#13 セックスを売り物にするということ

#14 20万でセックスさせてくれませんか

#15 AV女優の出口は何もない荒野だ

#16 後悔のない人生の作り方

#17 刻まれた傷たち

#18 出演契約書

#19 善意の皮を被った欲の怪物たち

#20 彼女の存在

#21 「かわいそう」のシンボル

#22 私が殺したものたち

#23 28錠1シート

#24 無為

#25 近寄る死の気配

#26 帰りたがっている場所

#27 私との約束

#28 読書について1

#29 読書について2

#30 孤独にならなかった

#31 人生の新陳代謝

#32 「私を忘れて、幸せになるな」

#33 戦闘宣言

#34 「自衛しろ」と言われても

#35 セックスドール

#36 言葉の代わりとなるもの

#37 雪とふるさと

#38 苦痛を換金する

#39 暗い森を歩く

#40 業

#41 四度目の誕生日

#42 私を私たらしめるもの

#43 ここじゃないどこかに行きたかった

#44 進むために止まる

#45 「好きだからしょうがなかったんだ」

#46 欲しいものの正体

#47 あの子は馬鹿だから

#48 言葉を前にして

#49 私をほどく

#50 あの頃の私へ

おわりに

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紗倉まな × 神野 藍

さくら まな × じんの あい

紗倉まな(さくら・まな)

1993年、千葉県生まれ。工業高等専門学校(高専)在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。著書に小説『最低。』『凹凸』『春、死なん』『ごっこ』『うつせみ』、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』『働くおっぱい』などがある。初めて書き下ろした小説『最低。』は瀬々敬久監督により映画化され、東京国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど話題となった。文芸誌「群像」に掲載された『春、死なん』が20年度野間文芸新人賞候補作となり注目される。最新エッセイは『犬と厄年』が絶賛発売中!

  

神野藍(じんの・あい)

文筆家、エッセイスト。元AV女優。1999年生まれ。2020年5月、早稲田大学在学中に渡辺まおとしてAV女優デビュー。2022年5月、現役引退後は、文筆家・タレントとして活動中。Webサイト「BEST T!MES」にて連載エッセイ「私をほどく〜AV女優「渡辺まお」回顧録」を執筆配信し話題となる。この連載をまとめた同タイトルの初著書初著書『私をほどく AV女優「渡辺まお」回顧録』を上梓。作家・鈴木涼美氏より「とても貴重な、心強い書き手の登場」と激賞される。「群像」(講談社)にて短編小説を発表。現在、新連載エッセイ「揺蕩と偏愛」を毎週金曜日に配信中。好きな本は谷崎潤一郎『痴人の愛』。趣味はトレーニング。

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