かつて毛沢東は、共産党にとって二つの棒、すなわち筆杆子(ペン)、銃杆子(銃)はともに重要だと力説した。銃、すなわち軍隊によって政権を国民党から奪取できたが、その政権の正当性を確固とするのは、ペン、メディアによる思想宣伝なのだ。習近平は軍権掌握によって強い共産党体制を復活させ、独裁化を進めようと画策していることはこれまで述べてきたが、同時にメディアをコントロールし、知識人を粛清し、世論を味方につけて独裁を強化しようとしているのだ。

 だが、知性と良心を兼ね備えた知識人やメディアが権力の錯誤を指摘できないで、どうして政治をあやまたずに運営できるというのだろう。誰が権力の暴走を止めることができるだろう。中国メディアの死、知識人の無力化もまた、チャイナリスクの大きな要因となっているのだ。

※新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。本文記事一部公開。

 

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。