失速気味デジタル庁、政策課題は山積 今秋4年目、組織刷新図る「第2経産省」
◾️「第2経産省」と呼ばれるデジタル庁の未来
石倉氏の退任後、いつしかデジタル庁は霞が関の中で「第2経産省」と呼ばれるようになった。これはデジタル庁内での主導権争いや政策の方向性について一定程度決着がつき、経済産業省出身者が表舞台に立つことが多くなったことを意味するのかもしれない。他省庁の既得権益とぶつかることが多いという特殊なポジションにある経産省と、既存の手法を大きく変えていくデジタル庁の特性が一致していることも背景にあるとは思う。
民間出身の事務方トップが求心力を失った一方、経産省出身者が原動力となってデジタル行政を引っ張っていく、そんな期待感もあったが、実際には引きずられていく格好となった他省庁からうまく協力を引き出せていたかと言えば、そうでもなさそうだ。
新たなデジタル技術を社会実装しようとすると、これまでの規制や既得権益を変革する方向に誘うケースが多い。このため、社会実装の旗振り役を果たすデジタル庁は、安全・安心を旨とする通常の官僚機構とは反りが合わない面がある。同庁が当初掲げていた各省庁のウェブサイトのデザインに統一性を持たせる構想さえも、他省庁の理解が得られず、いつの間にか失速した。新型コロナ禍で必要とされ、急きょ開発された「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」も必要性が急低下し、2024年3月末で静かにサービス終了を迎えた。市町村のデータを、Googleやアマゾン系列のサーバーに移す計画も当初計画に間に合わない自治体が続出し、見直しを余儀なくされた。マイナンバーカードに関してもひも付けミスなどトラブルが相次ぎ、前途多難だ。
もちろん、マイナカードと免許証の一体化など着実に進んでいる案件もある。また、6月13日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」には、自治体や省庁が「ガバメントAI(仮称)」を活用し、業務効率化を図る構想が盛り込まれるなど、デジタル庁側も既存業務の継続だけでなく、新たな分野にチャレンジしている。2025~26年度の構築を目指しているという。
こうした中、デジタル庁でシンボル的な存在となってしまった事務方トップのデジタル監に代わり、事務方ナンバー2で、実質的にはトップとなる旧郵政省出身のデジタル審議官が今夏で交代するか、留任するかが注目された。後任として名前が挙がったのは、経産省出身の統括官と財務省出身の統括官。両氏とも発足時からデジタル庁で勤め上げてきた実力派官僚だ。結局、6月24日に公表された人事で財務省出身の統括官、冨安泰一郎氏がデジ審の座を射止めたことが明らかになった。手堅い行政運営で知られる冨安氏が後のデジタル施策をどう差配していくかは見通せないが、これまでとは多少異なってきそうだ。
文責・共同通信記者M
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