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廃止が決まったJR三江線の旅

乗るなら今!鉄道ファンが押しかける

 三次から1時間ほどの口羽(くちば)からは、1975年に開通した「新線」区間に入る。高規格の新幹線と比べても遜色のない造りのため、カーブも緩やかでトンネルと鉄橋が多い。それまでの最徐行に近いのろさとは打って変わって快適なスピードで駆け抜ける。江の川も3回渡るのは、いかにも「新線」風だ。

宇都井駅に到着

 トンネルをいくつも抜けた先の高架上にあるのが宇津井(うづい)駅。地上20mのところにホームがあり、列車内から見下ろすと目が眩むほどだ。車内にいたテレビスタッフは、この駅でごっそり降りていった。「天空の駅」なのに階段しかなく、高齢者でも利用するのが煩わしいであろう。そのためか、一日平均の利用者が1人未満らしい。停車時間は短く、次の列車まで上下ともに7時間後。迎えの車がなければ、とても途中下車できない。

石見都賀直前、石州瓦の家並

 石見都賀あたりでは、赤茶色の屋根が目につく。これは石州瓦と呼ばれるもので、山陰地方に特徴的な集落の情景だ。

 

 浜原で「新線」区間は終わり、またカーブの多いローカル線に逆戻り。列車はゆったりと江の川沿いに律儀にたどる。三次を出て2時間10分程で、この列車の終点石見川本に到着する。実は、この車両が、1時間半後に列車番号を変えて、江津行きとなるので、ひとつの列車が長時間停車するのと同じことだが、強制的に下車させられ、車両はエンジンを切って施錠してしまう。運転士も、詰所に消えていった。駅員がいない時間帯なので、保安上の理由かもしれない。

 

 2時間乗車して、ちょっと退屈しかけた頃だったので、却ってこの長時間停車は気分転換に最適だった。たまたま同じボックス席に乗り合わせた鉄道ファンの人と狭い川本の市街地を散策し、お昼時だったので駅近くの寿司屋で穴子重を食べた。安い上に美味。これはおススメである。

 

 石見川本発江津行きとなった列車は、運転を再開。列車番号が変わっても乗客は、ほぼ同じメンバーである。相変わらず、江の川に沿って走る。1時間ほど走り、川幅が広くなったかなと思う頃、終点の一つ手前の江津本町に停車した。駅名からすると、街の真ん中の賑やかな駅を想像したけれど、川に面した閑散としたホームがあるだけで、周囲に人家は見えず、もちろん乗り降りもなかった。

 

 最後に江の川と分かれ左に大きくカーブして、山陰本線と合流すると江津駅。それほど大きな町ではないけれど、列車が行きかい、人もそこそこ乗り降りしていて、やけに賑やかなホームだと感じた。それだけ、三江線沿線は閑散としていたということである。

 

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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