本当の処方箋は企業と党組織の分離を進め、民営化と市場ルールによる淘汰のはずだが、習近平サイドの方針は党の主導権をさらに強くし、M&Aによる企業統合によって産業の強靱化を進めようとしているわけだ。ゾンビ企業の整理にどちらが効果があるかはまだ不明だが、二つの矛盾する方針の間で現場がサボタージュに流れているというのが現状とすれば、問題解決は程遠いだろう。

 

中国経済回復の見込みは一切なし

 もう一つ習近平サイドが難癖をつけたのは、李克強が三月に指示を表明した「債務の株式化」(DES)だ。たしかにDESをゾンビ企業に適用すれば、問題が悪化する可能性は大きく、この点は習近平サイドが正しく、六月の段階でDES政策はゾンビ企業を対象としない方針が決まっただけでなく、DES政策自体が立ち消えになりそうな様子だ。

 経済政策においては、ある程度方針を決定したなら、それをしばらくやり続けなければ効果は見えてこない。だが、今の中国のように権力闘争の道具にされてしまうと、効果の出る前に政策が変更され、現場のやる気も失われる。

 李克強に同情的な周辺の人々に聞くと、「李克強としては上層部が設定した成長目標を達成しなければならないという厳しい条件が付けられている。その点、習近平は経済成長目標の達成は首相の責任にして、改革を主張できる。習近平式改革を進めれば、間違いなく経済はハードランディングを回避できない。だが、それを乗り越えると、習近平が主要国有企業を掌握した強い開発独裁体制ができるかもしれない」

次のページ 習近平政権の間は、中国経済が回復する見込みは一切ない理由