第二次大戦後から今に至るまで曲折はあるものの、世界のルールメーカーは戦勝国連合の国連常任理事国であり、事実上の米国といっていい。だから、米国に皇帝はいないが、現代の帝国といわれてきた。近年、この国際秩序と米国のルールメーカーとしての地位が揺らぎはじめた。震源地の一つはイスラム圏だが、もう一つが中国である。

 彼らは、この米帝国に挑戦し、自らの唱える秩序、ルールが支配する地域を広げようとしている。日本の安全保障や経済や未来に関わるのは、間違いなく、タイトルに示した「赤い帝国」中国である。中国はまぎれもなく、今の段階で、軍事、経済、文化において少なからぬ民族や国を事実上支配し、世界に影響力を与える帝国となった。その膨脹スピードは習近平政権になって加速している。

 この文(『赤い帝国・中国が滅びある日』まえがき)を執筆中の二〇一六年一〇月一日、中国の人民元がIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)に五番目の通貨として加盟した。これは『通貨戦争』(宋鴻兵著 中信出版)や『貨幣覇権戦争』(王権著、新華出版)といった書籍が中国で大ベストセラーになる二〇〇七年ごろから、中国が切実に望んでいた人民元の国際通貨への第一歩、米ドル基軸体制に挑戦し貨幣覇権を打ち立てるという野望の第一歩と位置付けられる事件だろう。

 国際基軸通貨となって、その通貨量の強弱を使ってグローバル資本市場の盛衰を主導し、他国の内部の富の分配から政権の交代までに影響力を持つ。そうなれば世界の技術と人材を集めることができ、世界一の軍事力とソフトパワーを併せ持つ世界の秩序の中心となることができる。まさしく今の米国がそれだ。この米ドル基軸体制に立ち向かうものは、世界最大の(潜在的)市場を誇る中国の人民元であるべきなのだ。いつか、あの赤い紙幣が世界の貨幣覇権を奪うのだ。……というのが中国の偽らざる本音だろう。

「赤い帝国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め太平洋進出を意識できるまでに強軍化をはかり、GDP規模世界第二位の経済大国として人民元を国際通貨入りさせることに成功した。文化覇権は一番難航しているが、それでも習近平政権の庇護を一番強く受けている万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。通貨の強さは軍事に裏付けられ、文化の強さは通貨に裏付けられる。この三つの覇権は三つ巴のように相乗効果を持って中国の野望の推進力となっている。

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