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小説家がすすめる「朝型生活」

夜型に見える小説家の仕事、あえて朝に行う理由とは?

夜型と思われる作家業ですが、小説家の江上剛さんは長らく毎朝4時起床の朝型の生活を続けているそうです。現代日本人にはなかなか難しい朝方生活ですが、江上さんが朝の時間を大事にしている理由は一体何なのでしょうか?

 

夜書いたものは、朝起きてみると
恥ずかしくて読めない

作家と聞くと、夜中原稿を書いて、昼間は寝ているか酒を飲んでいるというイメージがあると思います。もちろんそういう人も結構いて、昔からそういうものだと思われていますが、私は朝から原稿を書きます。長年会社勤めだったせいもありますが、やはり朝から働かなければいけないというのが持論です。
夜は遅く寝る日もありますが、それでも毎日朝4時に起きて、原稿を書くことから一日が始まります。何かを創造したり、記憶したりするには、朝が一番適していると思うからです。

よく「夜のラブレター」と言って、夜書いたものは、朝起きてみると恥ずかしくて読めない、ということがあります。やはり夜は人間の生命力が落ちているのか、何かが過剰なのか。だから執筆に限らず、会社勤めの場合も、仕事のレポートを書いたり企画を考えたりするのは朝がお勧めです。人間は太古の昔より、日が落ちれば眠る動物なのです。
私は会社員時代から朝型でした。若い頃は飲んで帰ってもちゃんと仕事ができたのですが、それでも夜頭を使うより、ひと眠りして、朝考えた方が建設的な案が浮かぶように思います。

実は今年から、原稿の前に一時間、英語の勉強を始めました。きっかけは、アジアの経済状況をルポする仕事で六カ国を回ったこと。この時、英語がもっと話せれば、よりスムーズにコミュニケーションが取れて、より深いところまで話が聞けるのではないかと思ったのです。

 

私の大先輩の八城政基さんから刺激を受けたことも大きな要因です。八城さんは1929年(昭和4)生まれですから、現在(2014年)で85歳です。エッソ石油の社長やシティバンクの在日代表を務められ、日本長期信用銀行が経営破綻し、誕生した新生銀行の社長・会長として見事に経営を再建された方です。私は八城さんと新生銀行の再建を『組織再生』(PHP文芸文庫)に描きました。そのご縁で現在も親しくさせていただいています。

 

八城さんは、米系企業に勤務されるくらいですから英語はもちろん、仏語も堪能です。その八城さんは乞われて2004年(平成16)七十五歳で中国の銀行業監督管理委員会国際顧問会委員、中国建設銀行社外取締役に就任されました。会議中は中国語の通訳が側にいるわけですが、八城さんはいっそのこと中国語を学ぼうと決意され、努力されました。今ではネイティブの中国人がびっくりするほど“読み、書き、話す”に何の不自由もないほど、中国語を操られます。メールのやりとりも中国語でなされるほどです。私はとても八城さんのようにはなれませんが、「まだまだやれる」と元気をいただいたことは事実です。

それはさておき、一番の目的は孫と一緒に海外旅行をするため。六十を過ぎてから、今さら改めて英語の勉強なんて恥ずかしいのですが、孫と楽しい旅行ができるなら、というところです。
何かを始めるのに決して遅いことはない、とよく言いますが、目的が何であれ、何かの楽しみのために新しいことを始めるのはなかなかいいものです。それが仕事にも役立てば一石二鳥。次のアジア取材までに上達すれば、仕事にも生かされるはずです。

<『50歳からの教養力』より抜粋>

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江上 剛

えがみ ごう

1954(昭和29)年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年に退行。1997年「第一勧銀総合屋事件」に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。銀行員としての傍ら、2002年『非情銀行』で小説家デビュー。


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