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いま、ホリエモンは何をしてお金を稼いでいる?

岡田斗司夫が語る、ホリエモンというカリスマ(後編)

7月9日に最新刊『99%の会社はいらない』(ベスト新書)を発売する堀江貴文氏は、岡田斗司夫氏とともにSFアニメ企画を始動。そこで岡田斗司夫氏に「なぜホリエモンのビジネスは順調なのか?」をうかがいました!

古くて新しい有料メルマガ

写真/柚木大介

 刑務所に放り込まれることになったホリエモンは、これまでの財産をすべて失うことがわかっていたのでしょう。だから、出所後の再帰のためにも、メルマガビジネスを中心事業に据えざるをえないと考えた。それだけの覚悟があったから、スタッフの体制も綿密に組み上げて、週1回のメルマガを発行し続けることができた。
 私は、彼の獄中見舞いに行ったことがあります。印象的だったのは、貴重な面会時間のほとんどを使い、メルマガの打ち合わせをスタッフと行っていたこと。そして、スタッフのやる気、真剣度の高さでした。彼の周りには、彼を支えようという強い気持ちを持った人たちが集まっていたんですね。
 ホリエモンの有料メルマガは税抜きで月額800円。1年間で約1万円なら売上を計算しやすいから、この値段設定にしたのじゃないかな。現在の会員は、だいたい1万5000人だと言われているから、売上は1億5000万円。配信事業者が手数料として3割取っているとすれば、ホリエモンサイドには約1億円が毎年入ってくることになります。

 これがどれだけすごいことか、物書きでもある私にはよくわかります。
 仮に、出所後のホリエモンがライブドア事件や刑務所内の暮らしについての本を書くという、よくある「文化人コース」を選んでいたとしたら?
 ベストセラーといってもせいぜい20~30万部が限度でしょう。1400円の単行本が30万部売れたとしても、印税10%なら著者の取り分は4200万円にすぎません。名のある著者であっても、30万部売れる本を年に1冊以上コンスタントに書ける人はそうそういないでしょう。彼は本もたくさん出しており(ライブドア事件や刑務所内の暮らしについてももちろん書いています)、ベストセラーもありますが、それをメインの事業にはしていません。
 ホリエモンはテレビにもよく出演するようになりましたが、その出演料はたかが知れています。ホリエモンや私のように、芸能人でもスポーツ選手でもない「文化人」の出演料なんて、1回あたりせいぜい2~3万円なんですよ。

 もしホリエモンが出所後、文化人コースを選んでいたとしたら、年商2000~3000万円で御の字、それ以降は毎年年商が減ることを覚悟しなければならなかったでしょう。だけど、彼は刑務所の中でメルマガビジネスを続けました。情報収集と情報発信さえできれば、確実に年商が1億円あるビジネスを立ち上げ、さらに他人のビジネスの立ち上げまで支援できることを実証して見せたんです。その実績こそ、彼の最大の強みでしょうね。
 出所後のホリエモンは、メルマガ以外にも、インターネット配信サービスのニコニコ生放送を使った会員向けライブ放送を行っています。ただ、「生主」(ニコニコ生放送でライブ配信をする人)としての彼の存在感はそれほどでもありません。
 メルマガの場合、会員からのビジネスに関する質問に対し、彼なりの回答を出すことが大きな売りになっていますが、相手のトークを受けて自分が返す「しゃべり」のスキルに関してはそれほど高くはないんですね。まあ、さすがのホリエモンといえども、万能ではないということでしょう。

 

インターネットが可能にしたオンラインサロン

 メルマガと並んで、ホリエモンのカリスマビジネスの柱になっているのが、「オンラインサロン」。インターネット上で会員同士が交流できるサービスなんだけど、実はこれについては私自身の発案が元になっています。
 ホリエモンが刑務所に入る前、私と彼はロフトプラスワンというトークライブハウスで対談しました。そこで私が出したのが、社長が従業員に給料を払うのではなく、「従業員が社長に給料を支払う」会社ごっこというアイデア。
 私のファンは会費を払って、私と一緒に仕事をする。私が本を執筆したり、講演したりするのを、「参加費を払って」手伝ってくれるわけです。仕事を手伝ってくれると私は助かるし、ファンはたんなるファン活動以上の体験ができて、学びも得られるというビジネスモデルです。私はFREEex(フリックス)という団体を作り、実験してみることにしました。
 ホリエモンはこのアイデアにすごく感心して、「なんで僕はそれを思いつかなかったんだ」と悔しがったほどです(笑)。彼は実際にFREEex に入会して、運営の仕組みをあれこれ学んでいきました。

 刑務所の中で彼はFREEex などを参考にして、自分のオンラインサロンをどう実現すればいいのかを考え抜いたのでしょう。彼はサロン運営の徹底的な省力化を行いました。集まって来た会員に対して、私はあれこれ仕事のやり方を教えようとします。
 だけど、ホリエモンは自分では教えません。集まって来た人たちが勝手に盛り上がって教え合い、ところどころで自分が口を出せばいい仕組みを作り上げました。サロン活動のほとんどはネット上で行われ、定員に空きがあって参加費を払えば、入るのも抜けるのも自由。彼がサロン活動全体を取り仕切っているわけではなくて、会員が自由にやりたいことをやる。ホリエモンは盛り上がっている面白そうなグループがあれば気の向いた時に参加するんですね。またネット上の活動のほか、月に2回くらいイベントを開催し、会員同士の交流を図っています。
「堀江貴文サロン」(現・HIU)は月額1万円で定員662名ですから、サロンのプラットフォーム事業者の手数料を抜いても、年間6000万円くらいの売上になります。さらに個人とは別に、月50万円の法人会員まで用意されています。
 メルマガで年間1億円、サロンで6000万円、書籍の出版やイベント、講演などを合わせれば、彼のカリスマビジネスがかなり順調にいっていることがわかりますね。

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岡田 斗司夫

おかだ としお

1958年大阪府生まれ。社会評論家。

1984年にアニメ制作会社ガイナックスの創業社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。

2010年に「オタキングex」(現FREEex)を立ち上げる。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を越えるベストセラーに。

その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を越える。

近著に『カリスマ論』(ベストセラーズ)がある。


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