8月は木染月(こぞめづき)、穂発月(ほはりづき)、9月は紅葉月(もみじづき)、寝覚月(ねざめづき) 暦における「月」の和名の多彩さ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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8月は木染月(こぞめづき)、穂発月(ほはりづき)、9月は紅葉月(もみじづき)、寝覚月(ねざめづき) 暦における「月」の和名の多彩さ

「生活と文化」にまつわる絶滅危惧知識


四季が織りなす風景を生活の一部としてきた日本人にとって、季節の移り変わりは、どんなに些細なことであっても、決して見逃すことのできないものであった。そんな日本人の繊細さがよく表れているのが、かつての日本の暦における「月」の和名表記である。日本では、1年12ヶ月を表現するのに、じつに多彩な言葉を用いてきたが、現在ではその多くが忘れ去られようとしている。そんな月の和名を簡潔にまとめた一節が、弊社刊『百年先まで保護していきたい 日本の絶滅危惧知識』にあるのでご紹介しよう。


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◾️花残月、鳴雷月、寝覚月って何月のこと!?

 

 月の和名といえば、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走というのが有名だが、じつはこれらはほんの一部。ほかにもたくさんの美しい名がつけられているので、選りすぐってご紹介しよう。本来は旧暦にもとづいたものなので、現在の季節に多少合わない表現もある。

 1月の和名は嘉月(かげつ)、泰月(たいげつ)、暮新月(くれしづき)、太郎月、子日月(ねのひづき)など、おめでたい正月や一年の始まりを思わせる言葉が並ぶ。2月は雪月消(ゆきげづき)、梅見月、初花月、3月は花見月、桜月、雛月(ひいなつき)などで、華やかな春の趣が漂ってくる。4月は花残月(はなのこりづき)、植月(うえつき)、木葉採月(このはとりづき)、5月は早苗月(さなえづき)、橘月、多草月(たぐさづき)などがあり、春から夏に向けて草木が芽吹いて茂っていく様子があらわれている。

 6月は風待月、鳴雷月(なるかみづき)、涼暮月(すずくれづき)、7月は七夕月、風微月(ふみつき)、穂含月(ほふみづき)、8月は木染月(こぞめづき)、穂発月(ほはりづき)、燕去月(つばめさりづき)など、夏の風情と秋の足音が感じられる。9月は紅葉月(もみじづき)、菊月、寝覚月(ねざめづき)など。菊月というのは、菊の節句ともいわれる9月9日の重陽の節句にちなんでいる。

 10月は初霜月、雷無月(かみなかりづき)、時雨月(しぐれづき)、11月は霜降月(しもふりづき)、雪待月(ゆきまちづき)、露隠端月(つゆこもりのはづき)などで、次第に雨が冷たくなり、景色が冬へと変わりつつある様子だ。12月は厳月(げんげつ)、窮月(きゅうげつ)、氷月(ひょうげつ)などがあり、厳しい寒さが伝わってくる。四季の風景や日本の文化がぎゅっと凝縮された月の和名、まずはひとつ覚えて使ってみたいものだ。

(『日本の絶滅危惧知識』から抜粋)

 

文/吉川さやか(よしかわ・さやか)

早稲田大学卒業後、出版社などでの勤務を経てイタリア、ドイツに留学。ライプツィヒ大学にて言語学を学ぶ。帰国後は編集者、企画制作ディレクターなどとして活動。

 

監修/新谷尚紀(しんたに・たかのり)

1948年広島県生まれ。国立歴史民俗博物館教授、国立総合研究大学院大学教授等を経て、現在、両名誉教授。著書に『生と死の民俗史』『民俗学とは何か』『神道入門 民俗伝承学から日本文化を読む』など多数。

 

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よしかわ さやか しんたに たかのり

吉川さやか(よしかわ・さやか)

早稲田大学卒業後、出版社などでの勤務を経てイタリア、ドイツに留学。ライプツィヒ大学にて言語学を学ぶ。帰国後は編集者、企画制作ディレクターなどとして活動。

 

新谷尚紀(しんたに・たかのり)

1948年広島県生まれ。国立歴史民俗博物館教授、国立総合研究大学院大学教授等を経て、現在、両名誉教授。著書に『生と死の民俗史』『民俗学とは何か』『神道入門 民俗伝承学から日本文化を読む』など多数。

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  • 2022.06.20