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「”おじさん”になったときのために気をつけたいことは?」古市憲寿さんに聞く!(27)

「慣れ」ないために、新しいものに出会う

古市さんは自著『だから日本はズレている』の中で、一つの組織の中にいることで、一つの価値観だけに染まった”おじさん”になってしまう危険性を示唆しました。では、そんな”おじさん”にならないためにできることとは?

「新しいこと」の周りに、「新しいこと」はある

写真/花井智子
「おじさん化」の危険性、「頑張りどころ」を間違えた日本を指摘した『だから日本はズレている』は発売から2ヵ月足らずで10万部を突破するベストセラーとなった。

 僕は何かに「慣れる」ことがもっとも怖いと思います。人って基本的に何にでも慣れてしまいますし、ずっと同じものを選ぶことに居心地のよさを感じてしまうんですよね。けれども、それってすごく怖いことでもある。
 なので、五木寛之さんとの対談は面白かったです。びっくりしたのは、対談に備えて僕の本を全部読んできて頂いたことです。僕が本に書いたことを、自然に話題に取り入れながら話をしてくれたんです。もう五木さんくらいの立場だったら、自分の知識と経験だけで誰とでも話せるはずなのに、貪欲に新しいことを取り込もうとしている。「おじさん」化することと、実際の年齢は関係ないんですよね。

 色々なことに慣れないために、新しいものと出会うことって大事だと思います。たとえば現代アーティストの鈴木康広くんの作品は、わかりやすくて、かつ誰もが、ハッとさせられるような気づきがあって、とても面白いです。
 彼の作品に『日本列島の方位磁針』というものがあります。これは文字通り日本列島の形をした方位磁針で、水に浮かべると実際の日本列島がどのような向きにあるのかを示してくれるんです。「N」とか「S」とかで表現されるよりも、「北海道はこっちなのか」とわかったほうが、方角が直感的に感じられますよね。
『ファスナーの船』という作品も面白いですよ。船が通った跡の水面がファスナーみたいに見える――そんな気づきから生み出された、ファスナーのスライダーに見立てたラジコンの船なんです。
 鈴木くんのことは、フジテレビの福原伸治さんに紹介してもらったんです。福原さんは過去に『ウゴウゴルーガ』などを手掛けていて、今は僕も関わっている24時間のインターネット放送局『ホウドウキョク』の責任者をしていました。今までもテレビ局はインターネットでニュース配信をしてきましたけど、どれも地上波の番組を転用したものばかりでした。この『ホウドウキョク』は独自の番組を製作し、それを24時間放送するという事業です。スタッフも少なくて本当に大変そうだし、成功するかどうかはわかりませんが、フジテレビが不調だからこそ、こうした「新しいこと」をやる意味は必ずあると思います。
 福原さんと言い、鈴木くんと言い、「新しいこと」をやっている人の周りには自然と「新しいこと」をやっている人が集まる気がしますね。

 

明日の第二十八回の質問は「Q28.30代から新しいことは始められますか?」です!

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古市 憲寿

ふるいち のりとし

1985年東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。株式会社ぽえち代表取締役。朝日新聞信頼回復と再生のための委員会外部委員、内閣官房「クールジャパン推進委員」メンバーなどを務める。日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に『希望難民ご一行様』(光文社新書)、『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。

Twitter: @poe1985


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