統一教会にとって日本人は「金の卵を産むガチョウ」だった【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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統一教会にとって日本人は「金の卵を産むガチョウ」だった【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第26回


統一教会との深い関係が次々発覚するも、「記憶にない」とオトボケ発言を繰り返していた山際経済再生担当相が事実上の更迭となった。一方、岸田首相の任命責任を問う声は強まるばかり。カルト自民党から日本を取り戻すことはできないのかと社会不安も高まっている。このまま岸田政権とともに日本は沈むのか。新刊『日本をダメにした B層の研究を刊行し、売国政治屋をのさばらせた大衆社会の末路を鋭く分析した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」連載第26回。


山際の地元では「神奈川18区の恥」と議員辞職の声も上がっているようだが、「日本の恥」だろう。しかも、時が経てば大衆は忘れるとばかりに、これからも議員として活動すると目を泳がせながら宣言。国賊が蔓延る日本。まさに世も末。

 

 

山際大志郎、大臣辞めても議員辞職は強く否定

 

 統一教会で、創始者の文鮮明に次ぐ地位の「世界会長」を務めた郭錠煥が朝日新聞の書面インタビューに応じた。郭は、教団幹部の中に文の教えを否定する勢力がいると主張し、「こうした勢力にとって最も重要だったのが、日本の統一教会だった。日本の信者と祝福家庭は、金の卵を産むガチョウとして見られていたからだ」と指摘した。

 現在、教団本部と袂を分かっている郭は、「90年代半ばから、日本の統一教会はあらゆる分野で停滞し、衰退する姿を見せたにもかかわらず、課せられる『ノルマ』、すなわち献金総額はさらに増えていった」「あらゆる項目で、信者たちに献金の納付を増やした結果、献金に関係した様々な副作用が生じ、家庭の破綻や信用破産など極端な事態が頻発する事態に至った」と日本の教団を批判した。

    *

 この反社会的カルトとベタベタな関係を築いてきたのが自民党である。経済再生担当相だった山際大志郎は教団との関係を誤魔化し続けた挙句、辞任に追い込まれたが、先もなさそうだし、この際、細田博之、萩生田光一といった〝濃厚接触者〟とお笑いトリオでも組んだらどうか。芸名は「ガチョウ俱楽部」がいい。

    *

 自民党は、村上誠一郎元行政改革担当大臣を1年間の党役職停止処分にした。村上は安倍晋三の「国葬」を欠席する意向を表明した際、安倍を「国賊」と批判。安倍派などが執行部に処分を求めていた。

 国賊に国賊と言ったら処分になるのか?

 アメリカ人にアメリカ人と言ったら処分か。

 ハンバーグをハンバーグと言ったら処分か。

 村上は「発言は本意ではなく不適切な表現で、撤回のうえ、安倍氏の遺族や関係者に謝罪したい」との弁明書を出したが、うっかり本音が出たのかもしれない。

 事実を指摘すれば処分され、カルトに汚染された議員は放置されたままでは国民は納得しない。ムッシュムラムラ。

    *

 衆院議員の斎藤洋明は、昨年の衆院選の前に、統一教会の関連団体から推薦を持ちかけられ、「一種の政策協定」を結んだと証言。斎藤曰く「例えば憲法改正の積極的な検討ですとか、同性婚であったりLGBTQ等の制度化に慎重であるべきだというような、例えばそういう内容が盛り込まれていました」。斎藤はこの文書に署名し、選挙では教団から電話かけなどの支援を受けたとのこと。自民党は〝熱湯風呂〟状態。山際の次に背中を押されるのは誰か。

 

岸田は、任命責任について「当然感じている。今後の審議、職責をしっかりと果たすことによって責任を果たしていきたい」と語った。では、細田博之や萩生田光一の処遇はどうなるのか。引き続き、「聞かない力」を発揮するのか。

 

 

■教団のリークに戦々恐々の政治家たち

 

 岸田政権の支持率低下に歯止めがかからない。共同通信の世論調査(10月8、9日)では支持率はわずか35%で、不支持率は48・3%に達した。岸田は統一教会との「関係を断ち切る」と強調したものの、期限を明確にしたわけでもなく、細田や萩生田の処遇も不明なままだ。党内調査では、自民党所属国会議員379人のうち半数近い180人に統一教会との接点があった。統一教会との関係を断ち切ると、これまでの蜜月ぶりや内部事情を教団が暴露するのではないかと不安に思っている議員もいるらしい。ジャーナリストの鈴木エイト氏はテレビ番組で、岸田が解散命令に言及したことに関し「今後解散命令にどんどん進む流れになると、関係のあった政治家に関する何かしらのリーク、情報を(教団が)出してくる可能性もある」と指摘。「どうぞどうぞ」。

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「統一教会票はわずか6万。これでどうやって自民党の政策に影響を与えることができるのかー」という趣旨のツイートがあった。どのタイミングで思考停止すると、ああなるんですかね? 謎。

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 世の中、気が滅入るようなニュースばかりだが、中には心温まる話題も。先日は《大人になるにつれて、人は根拠のない自信を失う。茂木健一郎の言葉》という記事がFacebookで紹介されていた。茂木さんは大人になってもそれを失っていないわけですね。《心に響いたら【シェア】》とあったので、心に響いたのでシェアしました。

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 NHKの契約者の個人情報を不正に入手し、インターネットで公開した「NHK党」の立花孝志党首が威力業務妨害の罪などに問われている裁判で、東京高裁は懲役2年6か月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。立花はNHKから受信料の集金を委託されていた男性と共謀、男性の業務用携帯端末に記録されていた契約者情報50件を撮影して加工、「YouTube」に投稿し、NHKに対し電話で「個人情報を拡散する」と迫ったとのこと。NHKの担当者はハンチング帽を叩き付けて「訴えてやる!」と反発したとか、しなかったとか。

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「ヤフーニュース」のコメント欄への投稿には、11月中旬から携帯電話の番号を登録したヤフーの利用者IDが必要となる。これはいいことですね。「ヤフコメ」はヘイトや差別の温床にもなっていた。ヤフーは不適切な投稿を繰り返すIDに対し、投稿を停止する措置をとってきたが、別のIDを使って再び不適切な投稿をするケースが多く、今回の措置に踏み切ったとのこと。世論工作のために「ヤフコメ」を使っていた悪党は今頃激怒しているだろう。「聞いてないよォ」と。

 

文:適菜収

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

 

第二章 自立を拒絶する人たち

 

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 

第三章 「正義」を笠に着る人たち

 

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 

第四章 陰謀論に走る人たち

 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

 

第五章 無責任な人たち

 

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

 

第六章 恥知らずな人たち

 

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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