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「尊敬する学者を教えてください。」古市憲寿さんに聞く!(4)

日本初の社会学者・加藤秀俊先生が教えてくれた働き方とは?

独自の世界観、独自の思考を貫いているような印象のある古市さんですが、その生き方に共感を覚えるという「先生」についてお話を伺いました。

狭い世界のレースには参加したくない

慶應義塾大学や東京大学大学院など、アカデミックな世界で過ごした時間は長く、小熊英二さんや上野千鶴子さん、本田由紀さんらとも親交がある。

研究室などにきちんと所属して誰かに師事した経験がないので、「この人の門下です」と言えるような方はいないのですが……定期的にお話を聞かせてもらっている加藤秀俊先生は、尊敬している知識人の1人です。彼は日本で初めて明示的に「社会学者」を名乗り始めた、社会学界のパイオニアとも呼べる存在です。
20代のころからメディア論・文明論をはじめとした著作を多数出されていて、86歳を迎える今年に至るまで精力的に活動しています。去年も『メディアの展開―情報社会学からみた「近代」』(中央公論新社)という600ページを越える大著を出版していました。

加藤先生は以前、京都大学の助教授だったころに学生運動に関わったことがあり、その関係で一度は大学を離れたことがあったそうです。
その時に大学教授という肩書きを使えなくなって、当時ほとんど誰も名乗っていなかった「社会学者」という肩書きを使い始めた。つまり「社会学者」というのは、もともと大学に所属していない人が名乗る肩書きだったんです。

前の質問でも少しお話しましたが、加藤先生は学外の活動にも精力的に参加する方でした。「思想の科学研究会」に関わったり、「未来学研究会」を結成したり、時には一般企業も巻き込む形で、さまざまなシンクタンクに関わっていました。他にも、「万国博を考える会」を結成して大阪万博にプランナーとして携わったり、スポンサーがついているビジネス色の強いプロジェクトに参加したり。
加藤先生のように学者としての活動だけでなく、他の分野でも積極的に成果を残すような生き方は、素敵だなと思います。

僕自身は、やっぱり大学の世界の中だけで、サラリーマンのように生きていくような働き方はしたくないんです。どこか一つの世界に閉じこもってしまうと、その世界の価値観でしか物事を捉えられなくなってしまう気がします。それは、非常に不健全なことだと思うんです。結果的に、競争がどんどんミクロになっていって、より狭い世界に固執していく。
狭い世界を極めることも生き方の一つではあると思いますが、僕はそのレースには参加したくありませんね。

 

明日の第五回の質問は「Q5.いま、どのような仕事を抱えていますか?」です!

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古市 憲寿

ふるいち のりとし

1985年東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。株式会社ぽえち代表取締役。朝日新聞信頼回復と再生のための委員会外部委員、内閣官房「クールジャパン推進委員」メンバーなどを務める。日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に『希望難民ご一行様』(光文社新書)、『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。

Twitter: @poe1985


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