橋下徹がメディアの記者を萎縮させた手口とは? 大石あきこ代議士を訴えた名誉毀損裁判【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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橋下徹がメディアの記者を萎縮させた手口とは? 大石あきこ代議士を訴えた名誉毀損裁判【篁五郎】

大石あきこ代議士を訴えた名誉毀損裁判・第二回口頭弁論

 裁判官から原告、被告双方に提案があった。被告の大石代議士と日刊ゲンダイ側には、次回の法廷までに証拠と主張を整理し、再度文面で提出をすること。原告側は被告側が提出した証拠に対して次々回の法廷で証拠を添えて反論をすること。この二つが提案され、双方とも了承。次回は7月21日(木)、その次は9月15日(木)に決定した。尚、次回と次々回の法廷はインターネット上でのやり取りとなるため非公開で行われる。

 大石代議士側は、橋下氏のTwitter、府知事・大阪市長時代の会見動画を証拠として提出している。橋下氏側は、大石代議士側の証拠をひっくり返すための論証を9月15日までに用意する必要が出てきた。9月15日の法廷は非公開ながら裁判の大きなヤマとなるだろう。

 

◆橋下徹氏は原告本人として出頭せざるを得ない可能性が高い

 裁判の後、被告側の大石代議士弁護団が大阪弁護士会館で会見を開いた。YouTubeで生配信され、当サイトも会見に参加した。冒頭に大石代議士のビデオメッセージが紹介され、主任弁護人の弘中弁護士が裁判の内容を説明した後に質疑応答に移った。

 最初に質問したのは当サイト。橋下徹氏と、橋下氏同様にマスメディアへアメとムチをしていた可能性がある松井一郎大阪市長を証人として呼ぶことがあるか?と聞くと、弘中弁護士が「一般論」と前置きした上で「橋下氏は証人ではなく原告本人として出頭せざるを得ない可能性が高いと考えています。ただ松井一郎氏は訴訟で直接関連しているのは薄いので可能性は低いでしょう」との回答を得た。

 その次に読売新聞の記者が質問。「橋下氏が記者を萎縮させたという証拠をソース付きで文面として提出したが、更なる証拠の補強として恫喝された記者を証人として呼ぶ可能性があるのか?」と聞くと、弘中弁護士は「動画やTwitterは直接的な証拠になるので、証人を呼んで同じことを言わせる必要はないのでは」という見解を示した。

 その後は、大石代議士の支援者や裁判を傍聴した人からの質問や裁判の感想、スラップ訴訟に関する疑問が飛び交った。弘中弁護士によると通常スラップ訴訟を受ける弁護士というのは殆どいないという。弘中弁護士によると、スラップ訴訟と認定されると不法行為として損害賠償義務を負う構造だからだそうだ。つまり橋下氏や松井一郎大阪市長、過去には吉村洋文大阪府知事はそうした構造を屁とも思わない人物なのだろう。

 質疑応答の中で、筆者が特に印象に残ったのが裁判とは無縁の子供を持つ女性の言葉だった。

「TVで橋下さんが記者の方をつるし上げたり、怒鳴ったりとかしているのを見ると私たち母親は「あの人気持ち悪いよ」「ヤバいよね」とか「下品よね」って言葉がたくさん出たんです。私も、橋下さんがTVに出ていたら子供に「TV消しなさい」と言って見せないようにしています。脳に悪いから。あかんから。ああいう人は上に立ったらあかん人やでと凄く言ってきたんです。今、橋下さんは大石さんを訴えていますけど、そんな事されたら私たち母親はみんな訴えられてしまいます。それって私たちも萎縮してしまうなとすごく感じました。言論の自由は弁護士さんやサポートしている人、誠実な記者の方が報道されることで守られているんだと。私たちも子どもたちのためにサポートしたいし、子どもたちに伝えるためにも見守っていきたいと思いました」

 まさに橋下氏が狙っていたことを言い当てたと感じる内容であった。権力者や有名人が一般の国民を名誉毀損や侮辱罪で訴えるのが乱発されると、自分も同じように訴えられるかもしれないと萎縮してしまう。そうさせないためにマスコミが権力者を監視し、おかしな発言や行動をすれば堂々と批判をする。かつて大阪のマスメディアも橋下氏に対して厳しい姿勢で臨んでいた。しかし、今では見る影もなく維新に対して好意的な報道ばかりだ。

 英国のメディア研究者、ブライアン・マクネアはマスメディアの役割の一つとして、「ジャーナリズムの番犬的な役割とでも呼ぶべき政治権力や経済権力の行動を明らかにしていく機能である」と述べている。

 会見の最後に弁護士団から「今回の裁判は権力とメデイアの関係を考え直すいい機会」だとし、道理の通らないことは異議を唱えることだと訴えた。橋下氏が大石議員をターゲットにしたことで今回の訴訟が世間に広がったので、弁護団の弁護士が言うようにマスメディアのあるべき姿をみんなで考えて欲しいと筆者も願っている。

 

文:篁五郎

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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