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Scene.10 毎日がエキサイティング!

高円寺文庫センター物語⑩

「店長、青林堂の手塚さんから電話ですよ」さすが「のりまん」いや、青林堂の魂を受け継ぐことになる手塚さん。

高円寺文庫センターの記念すべき第1回のサイン会。サブカルチャー文化の雄といえる、みうらじゅんさんをお招きすることができたのも彼女のおかげ。

みうらさんの造語『マイブーム』は流行語で終わることなく定着、この翌年には新語・流行語大賞を取るという時期だった。

待ち合わせた喫茶店では、こっちが緊張でカチンコチンなのに、みうらさんはテレビで観るままの脱力系自然体。

「高円寺は久しぶりだなぁ、住んでいたから気安くていいの」

こうして、1996年9月1日。青林堂の新刊、みうらじゅん『はんすう』の出版記念サイン会が始まった。

お客さんはサブの出入り口から入って、文庫棚を右に回るとみうらさんが控えるレジ前のテーブルへという導線のサイン会。店の外壁に沿って並ぶお客さんに、残暑の暑さが申し訳ない!

みうらさんったら、サインばかりか丁寧なイラストまで描くサービスぶりだから行列がなかなか進まないったらありゃしない。ただ炎天下、並んでくれたファンの皆さんにイラストも添えるみうらさんのハートには満足して貰えただろうなぁ~。

通行人から見たら、本屋になんの行列だろうというPR効果もあったかな。第1回目のサイン会は高円寺的アッピールにもなり得たと思う。

サイン会でのみうらさんとスタッフのりえ蔵

センターを紹介して貰ったり、この年に入っての「ねこじるTシャツ」や根本敬リトグラフ販売でも、かなり『ガロ』ファンに来て貰っていたと思うけどサイン会は来てくれるかなと不安もあった。

そんな不安を抱えつつの、第1回目サイン会は予測もつかないままに80人は大成功でしょ!

嬉しかったぁ、営業の柱がまた一本できた。

 

アタマの中には、THE WHOの「My Generation」が流れる。

Scene.10 毎日がエキサイティング!

 

サイン会の行列にしては、お客さんが高円寺スタイルっぽくないなっと不安がよぎった。

ミュージシャンが、デヴューアルバムでヒットを飛ばしても2作目が肝心というのが脳裏をよぎるサイン会風景だった。

「店長! 行列を整理しながら話してたけんが、お客さんは関東一円からきよったばい」

「内山くん、サイン会の2回目はいけるかねぇ?」

『TOKYO TRIBE2』や『隣人13号』の漫画で、ヤンキーやラッパーの心をつかんだ井上三太さん。

祥伝社の雑誌『Boon』で連載の『TOKYO TRIBE2』で、ストリート系ファンを掴んだだけに高円寺スタイルにはそぐわないお客さん達が集まって来た。

ボクらにとっての二回目のサイン会『井上三太短編集』発売記念サイン会が、始まろうとしていた。

発売元の出版社、イーストプレスの編集者や営業さんも来客数を心配していたが杞憂に終わった。行列に、次々とファンが加わってふくらんでゆく!

ちょっと異様なのは、男子ばっかり! 文庫センター最初の「みうらじゅんサイン会」が、女子が目立ったので印象が際立つ感じがする。

三太さんが、編集者に伴われてやって来た。ご挨拶を交わして、セッティングも整ったテーブルについて準備OK! 三太さん、お若いのにクール。

お客さんのフアッションは、黒が基調。男子ばかりだと、男子校の学校行事みたいに見えるのは、ボクが男子校出身だからか・・・

とにかく粛々と進み、禅寺のように静か!

それこそ、嵐のまえの静けさだった。この2年後、とんでもない事態が待ち受けているとは・・・

もちろん、ボクらみんな知る由もなかった。

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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