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「世界最大の機関投資家」が日本株を売却する日

元野村投信ファンドマネージャーの警鐘・金融資産が消滅する! 第7回

■バブル崩壊時に痛感した、下落相場で資金を現金化する恐ろしさ

 2019年12月時点(同原稿執筆時)で、日経平均株価は米中貿易交渉の第一弾合意などを好感して1年2か月ぶりに2万4000円台に乗せてきました。

 仮にGPIFがこの株価水準から評価益の1割を実現益に変える目的で3・8兆円の国内株式の売却を始め、日経平均株価とTOPIX配当込み指数がともに16・8%下落すると仮定した場合、 日経平均株価は2万円前後まで4000円前後下落する計算になります。

 これに、売却時の方が買付時よりも市場インパクトが大きくなる可能性が高いことを考慮すれば、GPIFが基本ポートフォリオの変更を決めた2014年10月31日の1万6413円前後まで下落してしまう可能性もあり得ない話ではないといえそうです。つまり、「世界最大の機関投資家」であるGPIFが、この5年間で積み上げた収益額の1割を実現益に変えようとするだけで、株価が元の水準に逆戻りしたとしても決して不思議なことではない状況なのです。

 株価が元に戻るだけなら別に大したことではないと感じる人も多いかもしれません。しかし、株価水準が、GPIFが基本ポートフォリオ変更を決めた2014年10月31日の水準に戻るということは、2014年度以降の5年間に上げてきた11兆4100億円の収益の1割に相当する1兆1410億円を実現益として確保することと引き換えに、残りの10兆2690億円の収益のほとんどを失うということなのです。もちろん、2014年10月31日の水準に戻ることが確定している訳ではありませんが、収益の一部を実現益に変える度に、残りの評価益の多くが失われていく構図は変わらないのです。下落相場の中で資産の現金化を図ることの恐ろしさは、日本人は1990年のバブル崩壊局面でも痛感しているのです。

 

■日本の投資家が見逃している、GPIFが抱える宿命

 GPIFが基本ポートフォリオを変更した2014年10月直前の9月末時点でGPIFの国内株式への投資比率は18・23%、投資金額は23兆8635億円でした。それに対して2019年6月末時点での国内株式への投資比率は23・5%、投資金額は37兆7642億円と投資比率で5・27%、投資金額にして13兆9007億円も多くなっています。

 実現益を確保するために国内株式の1割、3兆7764億円を売却したとしても投資金額は約34兆円と2014年9月末時点よりも10兆円以上も多く、国内株式の構成比も24%前後と6%弱も高い状況であり、株価の変動の影響を受けやすくなっています。これは換言すれば評価益を実現益に変え難い状況になっているということでもあります。

 「世界最大の機関投資家」であるGPIFは、評価益を実現益に変えることができないという宿命を背負っている。

  これが、政府やGPIFの運用戦略を決めている有識者たちや、日本の投資家が見逃している「世界最大の機関投資家」が抱える宿命であり、マーケットの厳しい現実なのです。

KEYWORDS:

『202X 金融資産消滅』
著者/近藤駿介

アベノミクスを支えた世界最大の機関投資家GPIFの日本株離れが始まる。
個人の金融資産のメルトダウンをどう乗り切るか!? 

元野村投信のプロ・ファンドマネージャー、現・金融経済評論家、コラムニストの著者がアベノミクス後にやってくる日本経済の危機に警鐘を鳴らす。アベノミクスを日銀とともに支えた世界最大の機関投資家GPIFが、安倍政権退陣後に日本株の売り手に転じることから株価が暴落し、日本人の金融資産や年金が大幅に目減りする。早ければ2020年代前半に始まる日本経済の長期低迷への備えを提案する。著者は東洋経済、ダイヤモンド、ブロゴスへの寄稿や、MXテレビ「WORLD MARKETZ」のレギュラーコメンテーターを務めるなど、さまざまな経済メディアで活躍中です。

【内容】
第1章 作り出されたアベノミクス相場 
第2章 世界最大の機関投資家GPIFとは何だ
第3章 GPIFの運用の問題点 
第4章 早ければ2020年からGPIFは売手に回る? 
第5章 投資の常識は非常識
第6章 「世界最大の売手」が出現する中での資産形成

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  • 近藤駿介
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