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公的年金資金の運用は本当に上手くいっているのか?

元野村投信ファンドマネージャーの警鐘・金融資産が消滅する! 第4回

■追加金融緩和とともに内外株式の比率を高めた「リスク選好型」へ

  前述のように、2014年10月31日に、GPIFは日銀の追加金融緩和にタイミングを合わせるように、従来の「国債偏重型」基本ポートフォリオを、内外株式の比率を高めた「リスク選好型」へと変更しました。

 これにより、当然GPIFの運用成績は内外株の動向の影響を強く受けるようになりました。2015年度以降、GPIFがたびたび大きな損失を計上するようになったのも、内外の株式市場や為替の影響を受けやすくなったからに他なりません。

 もしGPIFの運用成績が現在の年金受給者の年金支給額に直接影響を及ぼすものであれば、おそらく「消えた年金問題」で一度政権を手放さなければならなくなった苦い経験を持つ安倍政権がGPIFの基本ポートフォリオをリスク選好型に変更することはなかったかもしれません。

 選挙への影響という観点からみれば、基本ポートフォリオの変更によってGPIFの運用成績が内外株や為替市場の影響を強く受けるようになるリスクよりも、GPIFの多額の運用資金を内外株に振り向けることによって生じる円安・株高というリターンの方がずっと大きいという政治判断が働いたのだと思います。たとえGPIFが運用によって多額の損失を生んだとしても、そのことが直ちに年金給付に影響を及ぼさないわけですから、年金世代からの大きな反発を受けて選挙に不利になる可能性は低いのです。

 公的年金を運用するGPIFの資産が、短期間とはいえ5兆円や10兆円も減るということは大きな問題ではあります。しかし、「公的年金2000万円不足問題」が大きな騒ぎとなった今でもGPIFの運用成績が大きく変動することは大きな問題とはなっていません。

 それは、米国株式市場が史上最高値を更新するなど世界的に株式市場が好調なことで GPIFの運用が結果的に収益を積み上げているという事実があり、GPIFの資産が大きく目減りしても「直ちに年金支給に影響を及ぼさない」と信じ込まれているからです。

 

◼️GPIFが毎年収益を上げてきていることと運用問題は別

 GPIFが2014年 10月に基本ポートフォリオを「リスク選好型」に変更して以降も、 中国が元切下げによって市場が動揺した2015年度を除いて毎年収益を上げてきているのは、内外株式市場とも好調だったからです。国内株式は自らの投資資金を投入したことに加え、日銀が異次元の金融緩和を強化し年間6兆円もの資金を株式市場に投入したことで株価は下支えされ、米国株式市場はトランプ大統領誕生を契機とした「トランプ相場」の恩恵を受け続けています。 

 GPIFが基本ポートフォリオを変更した2014年10月31日を基準にすると、2019年11月末までの5年1か月の間で日経平均株価は41・9%、東証株価指数(TOPIX) は27・4%上昇している上、米国株はNYダウが61・3%、ナスダックは87・1%も上昇しています。

 GPIFの基本ポートフォリオを変更して公的年金資産を株式市場に追加投入され、「異次元の金融緩和」と称して日銀の資金を株式市場に投入するという日本自身の「自助努力」と、トランプ大統領誕生に伴う「トランプ相場」という「外的追い風」を受けて、これまではGPIFの基本ポートフォリオを「リスク選好型」に変更したことによる問題は顕在化してきませんでした。しかし、それが顕在化してこなかったことと、GPIFの運用上の問題の有無とは全く別問題だということは認識しておかなければなりません。 

 では、「世界最大の機関投資家」と称されるGPIFは、どのような運用上の問題を抱えているのでしょうか。 それを見れば今後GPIFが金融市場にどのような「北風」を吹き付けてくるかが想像できるでしょう。 

KEYWORDS:

『202X 金融資産消滅』
著者/近藤駿介

アベノミクスを支えた世界最大の機関投資家GPIFの日本株離れが始まる。
個人の金融資産のメルトダウンをどう乗り切るか!? 

元野村投信のプロ・ファンドマネージャー、現・金融経済評論家、コラムニストの著者がアベノミクス後にやってくる日本経済の危機に警鐘を鳴らす。アベノミクスを日銀とともに支えた世界最大の機関投資家GPIFが、安倍政権退陣後に日本株の売り手に転じることから株価が暴落し、日本人の金融資産や年金が大幅に目減りする。早ければ2020年代前半に始まる日本経済の長期低迷への備えを提案する。著者は東洋経済、ダイヤモンド、ブロゴスへの寄稿や、MXテレビ「WORLD MARKETZ」のレギュラーコメンテーターを務めるなど、さまざまな経済メディアで活躍中です。

【内容】
第1章 作り出されたアベノミクス相場 
第2章 世界最大の機関投資家GPIFとは何だ
第3章 GPIFの運用の問題点 
第4章 早ければ2020年からGPIFは売手に回る? 
第5章 投資の常識は非常識
第6章 「世界最大の売手」が出現する中での資産形成

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  • 近藤駿介
  • 2020.02.27