難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』著作を綴った「ピエロの母」が、息子の身体中の皮膚をおおう病に、胸張り裂けるばかりの自責の思いを綴った。
 

◆頑張る先に何が見える

私は普通とは反対の言葉を、心の中で(息子の名前)に投げかけた。
もう、頑張らなくていいよ。
痛々しい姿を見ることが辛い。
実際に陽がどれほど、痛いのか、辛いのか、苦しいのか。
わからない。でも、
母ちゃん、痛いよ」と言っているようで・・・。
涙を流し、陽を見つめて立ち尽くしている私に、看護士さんがそっと肩に手をのせた。
そしてまた、私は声を押し殺して泣いた。
しばらくして別室に移り、先生から話を聞くことになった。
内容は夫から聞いた話とほとんど変わらない。
質問はありますか ? と聞かれ、
命は・・・」と言葉をつまらせたところで、
先生は冷静にゆっくりと答えた。
まだ、わかりません
いま、危険な状態であるのは確実です
・・・
なら、辛い想いを続けさせる前に、楽にしてあげれば・・・。

魚鱗癬/パブリックドメイン

魚鱗癬(ぎょりんせん)という病気の種類の中でも、最重度の道化師様魚鱗癬。医学の進歩により、この病気も、生存できる可能性は以前より高くなったとのこと。

でも完治することはない。

全身の皮膚は、正常な皮膚が1ミリもない。
その赤い目で、世の中を見ることができるの?
その開ききった口で、食べたり喋ったりできるの?
耳が見当たらないけど、音は聞こえるの?

グローブみたいな手で、物はつかめるの?
指のくっついた足で、歩けるの?

大きくなれても、その見た目から好奇の目にさらされる。

もう分からない。
なにが
なにが
正しい?

これでも母親なら、頑張れ、生きて、と願うのが普通だろうか。
わからない。

その日から病室に、心理カウンセラーの方が来るようになった。

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