「受験の神様」にして精神科医の和田秀樹氏が上梓した初めての自伝的小説『灘校物語』(サイゾー)が面白いと評判だ。和田氏の青春の母校である灘校を舞台に主人公ヒデキの七転八倒の物語が描かれている。ヒデキはとにかく好奇心旺盛で飽きっぽく、過集中という性格。和田氏はみずから、「発達障害人生を送ってきた」としみじみ語る。一方対談相手の「えらいてんちょう」こと矢内東紀氏は、双極性障害のうえ発達障害とのこと。人気Youtuberとして注目を浴びる一方、近刊『「NHKから国民を守る党」の研究』(KKベストセラーズ)では党首の立花孝志を徹底批判し、N国党の躍進を分析。どのメディアもN国党の圧力を恐れ、忖度して批判をしないなか、批判の急先鋒となって注目を浴びた。今日の対談では、禁煙の啓蒙に端を発し、日本社会での生きにくさについて考えていく。

■嫌煙の次は「嫌酒」の時代がやってくる⁉

和田秀樹(以下:和田) 「僕は、自分はタバコを吸わないのに、タバコを吸うヤツの味方だしさ」

矢内東紀(以下:矢内) 「和田秀樹先生は、どういう理屈で、喫煙者の味方なんでしたっけ」

和田 「僕が若い頃ってさ。精神病院に入ると、1日タバコは2本しか吸わせてもらえなかった。なんかさ、“それって、どうよ”って思ったわけよ。そしたらさ、この人も、たぶん、発達障害だと思うんだけど、石川信義さんという方がいて。この方は、東大の経済学部を出て、安田火災海上保険に入ったのに、ある日、突然、東大の医学部に入り直して、全共闘の運動もして、精神病院を開業するわけですよ。元々、金融機関に勤めてたから、そういうの、うまいんだろうね」

えら 「ああ、経営が…」

和田 「うん。それで、群馬県に三枚橋病院って作って、病院のなかにディスコを作ったり、タバコを吸うのを自由にしたりしたんですよ。で、“患者さんに2本しかタバコを吸わせないのは人権蹂躙だ”っていってさ。まあ、僕らからすると、精神障碍者の解放運動のなかでタバコを吸わせるということは、ある種の自由の象徴なわけだよ。ところがさ。もう、どんどん、不自由になっていくわけじゃん。僕がアメリカに留学していた’90年代は、アメリカ中、どこも建物のなかでも吸えなかったのに、ラスベガスだけは歩きタバコで吸えてさ。みんな、もう、ホッとしたような顔してるわけよ。シンガポールとかでも、ゴミのポイ捨てが一切禁止じゃないですか。ところが、ラッフルズホテルのなかの『ロングバー』っていうバーだけは、みんな、好き勝手にピーナッツの皮を捨てて、それで、ちょっと、欲求不満を解消してるとこがある。だから、僕なんかからいわせたら、そうやって、タバコを吸うヤツをいじめるのが、なんとなく…」

矢内 「まあ、だから、要するに、その、自分たちが、いじめられているような感じがしてくるというやつですね。少数者に対する、その、正義の名のもとの迫害みたいな。それは、すごく、よくわかります。で、タバコの次は、どこに行くのかって話ですね」

和田 「WHOはね、ずーっと酒を叩き続けていて。それで2003年から、もう4回くらいにわたって、各国のテレビ局とかに“CMを自粛しろ”、酒屋に“安売りをやめろ”とか、“11時以降は酒を売るな”ってやっていて。もう、ほとんどの国が、11時以降、酒を買えないのね。で、バーも2時までしかやってない。あと、酒の広告自体は禁止されてないんだけど、タバコと一緒で、酒を飲んでるシーンの広告が、ダメなんですよ。ところが、日本だけはさ、数人殺したくらいで、テレビ局はボロンクソに叩くくせに、アルコールのテレビ広告って、ベストテンに3社くらいが入っている。アルコールで年間5万人も死んでるんだけど、テレビ局員は自分たちの年収1500万円を守るためだったら、WHOになんといわれても、平気なんだよ。だから、結局、タバコは負けちゃったから、アルコールの会社を電通とか博報堂はさ、守ろうとしてるね」

矢内 「いや、なんていうか、その、イスラム教っていうのは、酒が禁止なわけですけど。中田考先生がいっていて、すごく面白かったのは、聖典というのは、豚肉が食えないとか、酒が飲めないというので、不自由だっていうふうにいわれるんだけど、じつは逆で、不自由な範囲をここまでにするという約束でもあると。だから、聖典には、タバコがどうとか書いてないから、タバコを新たに禁止するなんていうのは、シャリーア(イスラム法)に反しているんだと。だから、その、タバコが禁止になったと。まあ、おそらく、今後、禁止の方向に向かっていきますよね」

和田 「おそらくね。だから、世界中がそうなってきて、10年くらい遅れて“さすがにマズイな”といったら、やめると思うよ。日本も」

矢内 「で、酒もダメになってきて。じゃあ、次は何なのっていったら、たとえば、排気ガスだとか、電車もなんとかだ、なんていって、どこまでも、どこまでも、いってしまうと。それっていうのは、ホントに、息苦しい社会になってしまうよなあ、という」

和田 「そう。だから、そこは息苦しい社会になるんだけど。ただ、唯一、日本の取り柄は、とにかくテレビ局に勤めてるヤツらはさ、年収1500万のためだったら、どんな汚いことやってもいいっていう教育が行き届いてるから。だから、酒は大丈夫だし、痩せすぎモデルは、絶対、追放しない。痩せすぎモデルだって、毎年100人、拒食症で死んでるわけだからさ。それこそ、『チャップリンの殺人狂時代』じゃないけど、1人や2人殺したら大悪人だけど、万単位で殺したら、正義の味方だからさ」