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文科省の業務削減案は教員にとって新たな重石になりかねない

【第11回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■文科省がやるべきことは現場への指示ではない

 これもまた、教員にとって新たな負担になってしまうのではないだろうか。
 中央教育審議会(中教審)が1月24日に総会を開いた。そこで、文部科学省(文科省)は学校に求める業務の具体的削減案のガイドラインを策定し、教育委員会や学校現場に示す方針を明らかにした。これにより、学校現場の働き方改革を徹底したいとの考えらしい。

 ガイドラインといえば、文科省が2019年1月25日付で示した公立学校における教員の超過勤務(残業)の上限指針がある。しかし、実質的な仕事は終わらないにもかかわらず強制的に帰宅させられるなどの「時短圧力」が学校現場では問題になってきている。
 その超過勤務の上限は、2019年12月4日に給特法の一部を改正する法案が成立したことから、今年4月より「指針」へと格上げされ、さらに徹底した実行が迫られることになる。
 ただし、格上げされるといっても、学校現場に理想を押しつけるだけで、この指針は実効性の乏しい「絵に描いた餅」に等しい。「やれ」と声を上げるだけで、「あとは現場まかせ」が文科省の姿勢なのだ。しかも、ただの飾りなら害も少ないが、現場への圧力があるので、時短圧力などによって教員が負担を強いられているのだ。

 新たに文科省が策定しようとしている「働き方改革を徹底するためのガイドライン」は、超過勤務のガイドラインを実現するための「具体策の提示」と考えられなくもない。文科省の言い分としては、まさに、そのとおりなのだろう。
 前述の中教審の総会時、萩生田光一文科相は「勤務時間管理の徹底、学校および教師が担う業務の明確化・適正化、また教職員定数の改善・充実、専門スタッフや外部人材の配置拡充など、あらゆる手段を尽くして取り組んでいきたい」と述べている。「取り組んでいきたい」といってはいるが、ガイドラインを出したあとは「やれ」で終わるかもしれないのだ。

 教員定数の改善や外部人材の配置拡充は文科省がやるべきことなのだが、その具体案には踏み込んでいない。自らやるべきことは棚に上げといて、現場に対しては非現実的な指示を行うだけの、まさに大臣発言ではないだろうか。
 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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