■鹵獲商船を改造して誕生した護衛空母第1号

 前回(護衛空母事始め:2020年01月01日公開)にも記したように、第2次大戦が始まると、空母はすぐにその威力を遺憾なく発揮した。特にアメリカや日本よりも先に同大戦に参戦していたイギリスの空母は、例えばタラント軍港空襲でイタリア戦艦部隊を壊滅させたり、戦艦ビスマルク追撃戦で同艦を足止めし撃沈へとつながった一撃をかますなど大活躍したが、海外領土大国イギリスにとっての空母の最大の貢献は、同国の生命線たるシー・レーンを脅かすUボートの攻撃から、輸送船団を守ることであった。
食料や燃料資源を海外からの輸入に頼らざるを得ないイギリスと同様の島国であるにもかかわらず、太平洋戦争勃発後、その末期に至るまでシー・レーンの防衛をなおざりにしていた日本とは異なり、イギリスは第1次大戦での厳しかった戦訓を踏まえて、その防衛をきわめて重視していた。
そして地味な戦いではあるが、「海の忍者」Uボートに対して、航空機は最良の切り札だった。しかしさすがのイギリス海軍も、保有している空母の隻数は元来少なかったにもかかわらず、その虎の子の艦隊空母数隻が緒戦において撃沈され、空母不足の窮地に立たされていた。
そこでイギリス海軍は、かつて空母の黎明期に商船を改造して空母を生み出した経験に立ち返り、前回紹介したCAMシップをさらに進めて、商船に最低限の空母化の改造を施した艦種を、1941年6月20日に護衛空母(Escort carrier)として就役させた。

2 護衛空母オーダシティ。艦橋などの上部構造物が全くないのでわかりにくいが、向かって右が艦首側となる。Uボートの潜望鏡での視察時などに誤認を誘うためのカモフラージュ塗装が施されている。

 これがオーダシティで、イギリス海軍初、つまり世界初の商船改造護衛空母である。しかもベースとなったのは、1940年3月にカリブ海方面でイギリス海軍が鹵獲したドイツ商船ハノーファーで、上部構造物を撤去してフラットにした船体の上部全面に飛行甲板を載せただけという「やっつけ仕事」で造り上げられていた。
搭載する艦上機は、アメリカから供与されたグラマンF4Fワイルドキャット戦闘機(イギリス海軍では当初マートレットと呼んでいた)が最大でもわずか8機である。だが同機は汎用性に富み、使い勝手の良い艦上機だった。
ところがオーダシティは1941年12月21日、ドイツ潜水艦U751に雷撃されてあえなく沈没してしまった。だが、わずか約半年の実戦参加ではあったものの、その間に最低限の設備しか持たないとはいえ、護衛空母がいかに有用かを見事に証明することとなった。
そこでイギリスは商船の護衛空母への改修を急いだが、同国の造船業界は戦時増産体制下ですでに手一杯の状態にあり、とてもではないが必要とされる隻数の護衛空母を建造することは不可能だった。
だが、護衛空母の戦力化は絶対の急務である。そこで急浮上してきたのが、「デモクラシーの兵器工場」ことアメリカの存在であった。