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イギリス艦隊航空隊の初期の活躍を支えた隠れた名機ブラックバーン・スキュア

第二次大戦急降下爆撃機列伝④ ~必中のピンポイント爆撃に賭ける蒼空の破壊者~

■イギリス艦隊航空隊の初期の活躍を支えた隠れた名機ブラックバーン・スキュア

空母アークロイヤルに着艦を試みるブラックバーン・スキュア。

 空母という限られたスペースに搭載できる航空機の機数は、自ずと制限されることになる。そのため、戦闘機、急降下爆撃機、雷撃(水平爆撃)機、偵察機を積むと、それぞれの機種ごとの搭載機数が少なくなってしまう。
このジレンマを解消すべく、空母を保有する各国の海軍は、戦間期には機種別の開発と生産のコスト節約も加味して、兼用の機種の開発に力を注いだ。今日でいうマルチロール機のはしりであり、空母発祥の国のイギリス海軍もこの例に洩れなかった。

 イギリス海軍は、同海軍の艦上機初の急降下爆撃機であり、同じく初の引込脚を備えた機体として、ブラックバーン社にスキュアを発注した。
ところが発注段階での明確なコンセプトの絞り込みが行われておらず(「できなかった」が正しいが)、複座の急降下爆撃機でありながら戦闘機としても使え、さらには偵察機にも利用できるというやっかいな要求を、ブラックバーン社の技術陣が「うまい具合に」まとめあげた結果として誕生したのだった。

 かくしてスキュアは第2次大戦勃発のほぼ1年前の1938年から部隊への配備が開始された。いずれも、それまで複葉機を運用していた部隊だったので、近代的なスキュアは歓迎されたという。

 1939年9月1日、ついに第2次大戦が勃発した。ヨーロッパ戦域で空母を保有する海軍はイギリスのみのため、陸上基地から発進する単発戦闘機が飛来できない遠洋での洋上航空戦では、スキュアは急降下爆撃機というよりも戦闘機として活躍する機会も少なくなかった。

 スキュアの大白星のひとつが、1939年9月26日に空母アークロイヤルから発進した機がドイツのドルニエDo18飛行艇を撃墜したことで、これは第2次大戦勃発後にイギリス側が初めて撃墜したドイツ機となった。
また急降下爆撃機としては、損傷して修理中だったドイツ軽巡洋艦ケーニヒスベルクを16機で襲撃し見事に撃沈している。

 だがスキュアが実用化された1930年代後半は航空技術が日進月歩を遂げていた時期で、艦上急降下爆撃機であり艦上戦闘機の代役もはたせるその性能も早晩の旧式化は否めず、1941年初頭には第一線機から外されている。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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