「桜を見る会」疑惑が次々と浮上し、安倍内閣に厳しい目が向けられている。11月に憲政史上最長在任の首相となった安倍晋三氏という存在が、「安倍一強」と呼ばれた強引な政権の瓦解が、今、始まったのだろうか……。ジャーナリスト・田原総一朗氏と『「安倍晋三」大研究 』の著者で東京新聞記者・望月衣塑子氏の二人が、安倍政権の正体と今後を考える!

●「桜を見る会」疑惑が安倍政権の行方を変える!?

c) harada-besttimes 2019

田原総一朗(以下、田原)・・・「桜を見る会」の疑惑が次々と国会やメディアを騒がせている。僕は、この問題は、安倍内閣が7年も続いたための神経の弛み、自民党の弛み以外の何ものでもないと思う。望月さんは、どう思われますか?

望月衣塑子(以下、望月)・・・そうですね。「5000円の会費は、ホテルに宿泊した客がほとんどだったので、ホテルが設定した」と安倍首相がぶら下がりで説明した後に、ホテルでの宿泊がない時期も5000円だったことなどが報道で出てきたり、招待者の名簿を破棄したとする5月9日は、共産党の宮本徹議員が内閣府に資料要求をしたわずが1時間後だったことが発覚するなど、説明の全てで辻褄が合わなくなっています。
 高速シュレッダーについても「予約で一杯だったから」と説明していましたが、シュレッダーの履歴を出したら、前日も含めて空いている時間がある。しまいには、「短期の障害者雇用の短時間勤務の職員の勤務調整をした結果」とまで説明する始末です。さすがにその場しのぎの〝理屈づくり〟に番記者たちも黙っていられないという感じで、桜を見る会の疑惑が国会で出て以降は、朝日、毎日、北海道新聞、西日本新聞などの若手の菅番の記者たちが、連日しつこく質問をしています。
 政治部の番記者が聞いているのに、質問を打ち切った時も何度かありました。安倍首相側が、あのぶら下がりの異例の20分会見で「説明責任を果たした」と思っているとの話もあり、内閣府・内閣官房での名簿のとりまとめの最終責任者でもある菅官房長官に質問が集中しています。

田原・・・安倍首相は、公選法違反疑惑で菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相の辞任について「国民の皆さまに大変申し訳なく、責任を痛感している」と謝った。相次いで2人の閣僚が辞めるっていうのも尋常じゃない。第2次安倍政権発足後、第4次安倍改造内閣までに累積9人の大臣が辞めることになったね。

望月・・・安倍首相は、「任命責任は私にある」と繰り返していますが、いつの間にか、あの言葉は組織のトップとしての潔さだけを感じさせて、責任を取らなくて済むようになってしまいました。「任命責任は私にあります」の発言が免罪符になり、首相は責任を取らないという枕詞に使われていませんか?
 狡猾な言葉のマジックが見え隠れします。決まって、「政権担当者として国民のための政策を推し進めていくのが私の責任の取り方だ」と付け加える。つまり、任命責任については、責任を取らなくていいということが常態化してしまった。2週間で立て続けに重要閣僚の経産大臣と法務大臣が辞任なんて、普通だったら政権はダッチロールします。安倍首相の言い方は、任命したのは自分だが、そのあとは個々の政治家の自己責任ですと言っているのと等しいと思うのです。

田原・・・モリカケ(「森友学園」「加計学園」)問題で大騒ぎになったときも、「自分自身は何も知らないが、家内が籠池夫妻と会っていた」といった、どこかわれ関せず。しかし、さすがに昭恵夫人を表に出したら政治家として失格になる……ということは分かっている。だから、その一線だけは守り通そうと、昭恵さんは表に出さないと必死に守った。

望月・・・2017年3月14日に、「昭恵夫人は“公人”ではなく、“私人”である」と閣議決定が行われています。書籍『THE 独裁者』(KKベストセラーズ)で、安倍内閣の閣議決定について紹介しましたが、驚かされるものが他にも色々ありました。

【閣議決定】
内閣の意思決定の一形式で、実質的には行政において最高の意思決定となる。法律案や政令・予算など、憲法や法律で内閣の職務権限とされる事項や、国政に関する重要事項が決定される。全国務大臣合意のもとで決定される。
以下は、安倍内閣が決定した閣議決定の例である
「そもそも」という言葉には「基本的に」という意味もある。
​(2017年5月12日)
●(「ポツダム宣言についてはつまびらかに読んだことはない」と答弁しながら)安倍内閣はポツダム宣言を当然読んでいる。(2015年6月2日)
●森友学園の国有地払い下げで、政治家からの不当な働きかけはなかった。(2017年3月28日)
●『二〇二〇年改憲発言』は自民党総裁としてのもので、首相の職務のものではない。
●憲法九条は核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない。
             (『THE 独裁者』/望月衣塑子著 p136〜p139より)


望月・・・昭恵夫人が国会に引っ張り出されたら安倍政権は終わりだと思っていたでしょう。

c) Yoshiro Sasaki 2019

 そのことをある国会議員にぶつけたら、「あの時、昭恵夫人を国会に出していたら、安倍政権はおろか、安倍晋三という政治家が終わっていただろう」と言っていました。だから、結局は、昭恵さんを守ったのではなくて、自分を守ったわけですよ。
 この間の2大臣の辞任劇、どちらも菅官房長官の側近で、〝菅人事〟と言われていました。トップとして責任があると言いながら、本当は「官房長官人事なんで、私は関係ない」といった対岸の火事みたいな無責任さが垣間見えました。
 改造内閣を見ると、総裁選に出た石破議員や石破派は入閣させない〝報復人事〟で、安倍さん子飼いの萩生田光一文科相や衛藤晟一農水相らを入れ、菅サプライズと言われる小泉進次郎環境相という面々でした。
 内実は、菅人事の大失敗だったというわけです。だからこそ、菅長官の判断で更迭を素早くできたのでしょう。比べると稲田朋美元防衛相の時は、本人が辞めたがっても安倍首相が引っ張りましたよね。様々な疑惑が出てきても、やはり最終的に判断する安倍さんがなかなか首を縦に振らなかった。 “お友達の色”をかつて以上に、内閣に強めすぎてしまった。その結果、バランスも働いていないし、自民党安倍一強の中で、自分たちがやりたいことは何でも出来るというおごりの部分が出てしまったと思います。

田原・・・僕は、安倍さんの任命責任の前に、経済産業大臣と法務大臣は議員辞職するべきだと思う。なぜ要求しないのか? だって2人とも法律に違反しているんだよ。違反行為をすれば議員辞職は当然のこと。安倍さんの説明責任を追及しても、安倍さんが辞めるはずもない。大臣は辞めるべき、という方へなぜ追及が行かないのか。やっぱり野党も新聞の政治部も鈍いんだと思う。

望月・・・もう一歩突っ込んだ質問は、「日和っている」ということですか?

田原・・・そう。野党が日和るから、安倍内閣はどんどん自信過剰になり、ますます傲慢になる。

望月・・・自民党のある議員は、安倍政権にとって「現在のように野党が分裂しているくらいがちょうどいい」と平気で言っています。政権奪取をされる心配はないからと。恐いのは、勢いがある「れいわ新選組」のような政党だと。

 参院選では、メディアが報道を控えたことが影響し、結果として思ったほど支持率が上がらず、ホッと胸をなでおろしたとも聞きました。とはいえ、山本太郎さんの人々の心を掴む力を評価している自民党議員らがいるのも印象的でした。ある議員は、「今、一番怖いのは“山本太郎”」とはっきり言っていました。

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