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日本では養子を出す人は貴重な存在 ~実親が安心して養子を送り出せる環境を~

「社会的養護」が必要とされる子どもたちの実情

■実親が安心して養子を送り出せる環境を

 法律上の問題には希望が見えてきました。しかし、制度がいくら整えられても、同時に認識や価値観が変化していかなければ、根本的な解決に向かいません。養子縁組に出すかどうかを決めるものは、最終的には実親の意思だからです。

 そのためには、直接関わる実親や養親の考え方だけでなく、社会全体が共有している認識や価値観が、少しずつでも変わっていく必要があります。意思決定の際には「社会の目」も大きく影響する要素になり得るからです。

 血縁はとても大切です。事実、人間は血縁によって家を守り、子孫を残し、歴史をつくってきたのであり、それはこれからも変わらないでしょう。

 それを前提とした上で、私たちが主張したいのは「親子関係では、必ずしも血がつながっている必要はない」ということです。血縁を否定したいわけでもなければ、もちろん血縁でない関係こそが正しいと言いたいわけでもありません。

 自分のDNAを受け継いだ子どもに価値があることは歴史を考えても当然です。しかしそうでない親子関係があったとしても、「それには価値がない」とは誰にも言えないと思うのです。むしろ両者に優劣なんかなく、どちらも同じだけ尊い。なぜならいずれの親子の場合も、お互いに愛し合い、人生の幸せなひと時を一緒に過ごすかけがえのない存在であることに変わりはないからです。

 養子に出す決断にあたり実親の感情が極めて複雑で、辛いものであることは理解できます。しかし、血のつながった親にしかできない決断があるのです。自分の子どもだからこそ、その将来を考えて養子に出す。その選択には勇気を伴いますし、同時に愛情が無くてはできないものだとも思います。

 何度も繰り返しますが、私は「一様に特別養子縁組の成立件数を増やそう」とか、「とにかく養子に出してほしい」といったことを主張するつもりは全くありません。

 施設への入所が多くを占めるのが現状です。子どもを育てていくことが、精神的、経済的に厳しいかもしれないと考えた際、追い詰められる前の選択肢のひとつになるように。その想いだけです。
 このような状況に置かれ迷っている人に、立ち止まって考えてほしいのです。安心して育っていける環境を整えて、子どもを待っている人がたくさんいます。彼らなら必ずや大切に守ってくれるはずです。

 

■多くのNPOに補助金が回らない現状

 ここで金銭面での問題にも言及しておきたいと思います。

 私が立ち上げたNPOをはじめ、他にも国内には養子縁組のあっせんを目的としたいくつかのNPOがありますが、いずれの団体にも現状では十分な補助金が回ってきていません。

 少子化は社会全体、そしてこの国の将来を左右する大きな問題です。それを考えれば、養子縁組を支援するNPOへの補助金を拡大させていくことは急務といえるでしょう。

 NPOは、運営者自身が自費を投じて運営することになります。そのため、規模の拡大に限度があります。組織の規模が小さければ、拠点から離れた場所へ相談に向かうための時間・費用の捻出が難しい上、限られた人員ではできることに限界があります。

 子育てへの不安を抱えた親が物理的にも精神的にも相談できる状態をつくり、法改正による「子どもを家庭で育てる」という原則を実現していくためにも、民間と国が一丸となって取り組んでいく必要があります。

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『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』
著者:阪口 源太(著)えらいてんちょう(著)にしかわたく(イラスト)

 

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親の虐待や育児放棄を理由に国で擁護している約4万5000人の児童のうち、現在約7割が児童養護施設で暮らしています。国連の指針によると児童の成育には家庭が不可欠であり、欧米では児童養護施設への入所よりも養子縁組が主流を占めています。

本書ではNPOとしてインターネット赤ちゃんポストを運営し、子どもの幸せを第一に考えた養子縁組を支援してきた著者が国の制度である特別養子縁組を解説。実親との親子関係を解消し、養親の元で新たな成育環境を獲得することができる特別養子縁組の有効性を、マンガと文章のミックスで検証していきます。

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阪口 源太

さかぐち げんた

NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事

1976年福井県生まれ。NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事。自ら創業したIT会社を売却後、東日本大震災をきっかけに社会起業家に転身し、NPOを設立。大阪を拠点として、特別養子縁組のサポートに携わる。著書に「産んでくれたら200万円 -特別養子縁組の真実-」(Kindle版)がある。


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  • たく, にしかわ
  • 2019.08.02