―「子どもたちを守り、日本の未来も変えましょう」
産みの親や養親希望者、そして子ども本人まで、養護児童に関わるさまざまな関係者の立場から、特別養子縁組を考えるとき、問題となるのは「子どもの権利」です。
『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』著:阪口源太、えらいてんちょう) 

 ■実親の親権が強すぎる日本

 

 現在の日本の法律では、生みの親である「実親」に極めて強い親権が保障されています。その中心は実母であり、実母が即、親権者となります。

 確かに親権の果たす役割は大きいのですが、他国に比べると親権が強すぎるため、弊害が生じていることも事実です。

 たとえば「養育里親」のもとに里子に行ったとしましょう。里親と関係を育みお互いに愛着が湧いてきても、実親に「うつ病が良くなってきたのでやっぱり育てたい」という意思がある場合には、親権が強く働き、子どもが行ったり来たりしてしまう事態が起こり得ます。戻った実親のもとで再度虐待に遭い、結果、今度は別の里親の元に行かざるを得ない事態すら起こり得るのです。

 このように、親権は時として「子どもに安心できる適切な成育環境をつくる」という目的に対してマイナスに働くことがあるのです。

 この強い親権は、私たちの社会が持っている「産んだ人が責任をもって育てるべき」という共通認識から生まれていると考えられます。しかし、果たして現代において、このような価値観が、すべてのケースに対して妥当なものでしょうか? 

 そのような価値観から離れ、代わりに「出産と養育の分離」という選択肢を提案します。「産み親が育てる」ことはあくまでも手段のひとつであり、場合によってはより良い他の手段があり得るのではないかと思うのです。 

 皆さんの親戚の顔を思い浮かべてみて下さい。自分のおじいさんやおばあさん、いとこはよく知っているけれども、ひいおじいさん、ひいおばあさんやそれ以上遠くなるとよくわからない、という人もきっと多いでしょう。逆に、ごく稀に会うけれども、具体的には血縁関係がよくわからない親戚が思い当たる人もいるでしょう。 

 確かに血縁関係は長い歴史を持ち、人間の本質にも関係する大切な概念です。一方でそれは必ずしも絶対的なものではない、というのが主張です。

 血縁による親子関係と、養子縁組などによる血縁のない親子関係は、同じ社会の中に共存していい。子どもを愛し、「家族」「家庭」という何にも代えられない空間を形成するという点において、両者に優劣はありません。

 自分の知らない親族について知りたければ自分で調べればいいように、養子であっても産みの親のことは大人になって知りたければ調べればいい、という認識で良いのではないでしょうか。現状でも、両親の離婚・再婚によって、複雑な血縁関係を有する人は珍しくありません。

 いまこの国で起きているのは「産む人と育てる人が同じでなければならない」という固定観念が一人歩きし、本来最優先にするべきはずの子どもの福祉が二の次になってしまっているという事態です。血縁や親権を必要以上に絶対視した結果だと言えるでしょう。 

 以上のような背景から私たちは、実親との親子関係が残る「養育里親」や「普通養子縁組」よりも、法律上の親子関係を断つことのできる「特別養子縁組」を推進します。もちろんこれは、現代において、社会的養護を必要とする子どもには実親との絶縁が望ましいケースが多いためです。家庭環境によっては実親との縁を残すほうがいいケースもあり、すべてを特別養子縁組にすべきだと主張するわけではありません。

 繰り返しになりますが、私たちが第一に考えなければならないのは子どもの幸せです。このような方法があるのだという認識がより一般的になることで、親にとっても子どもにとっても選択肢が増えることが大切なのです。