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クラシカルでプログレッシブ
“大阪の迎賓館”リーガロイヤルホテルのたからもの巡り

輝きを増し続けるホテルのリブランディング・ストーリー

創業84年の歴史を持ち、「大阪の迎賓館」とうたわれたリーガロイヤルホテルが、創業時から持ち続けている唯一無二の価値を最大化するリ・ブランディングに着手、進化が加速している。
伝統と革新をテーマとしたプロジェクト─その推進者たちを取材した。

メインロビーに敷かれた鮮やかな大緞通『万葉の錦』が、訪れる人を優しく迎え入れてくれる(提供:リーガロイヤルホテル)

■令和における大阪の迎賓館

 皇室をはじめ、国内外の賓客をもてなしてきた大阪・中之島のリーガロイヤルホテル。だが、「大阪の迎賓館」とうたわれ、80余年の華々しい歴史を誇るこのホテルですら、その価値を維持し続けること、そして、一流ホテルであり続けることは簡単ではない。

株式会社ロイヤルホテル代表取締役社長・䕃山秀一氏

「永い歳月は、建物だけではなくブランドの劣化も進めてきた」

 2年前、メインバンクの三井住友銀行から株式会社ロイヤルホテルの代表に就任した䕃山秀一社長は、自身も結婚式を挙げたほどのリーガロイヤルファンだった。しかし、外資系ホテルがひしめく現在のホテル業界を鑑み、また、お客様や従業員からの『昔は良かった』という声を聞き、すぐに「ブランドの再構築=リ・ブランディング」が必要だと考えた。

 このリ・ブランディングのディレクションを務めたのが東京のクリエイティブディレクター・左居穣氏(minsak)だった。そして、彼と同世代である経営企画部・中谷知寿氏と出会う。
 この2人の化学反応が、リーガロイヤルホテルのリ・ブランディングプロジェクトを推進していくことになる。

左・株式会社ロイヤルホテル 中谷知寿氏/右・minsak 左居穣氏

「ここにしかないユニークさ、価値がたくさんあります。『今あるものが素晴らしい』のです」

 気鋭のクリエイターは、従業員ですら忘れかけていた、リーガロイヤルホテルがすでに持っている魅力を、進歩した技術の活用によって現代に蘇らせるという提案を行った。

 それを受けて中谷氏はこう感じたという。

「灯台下暗し。私たちには当たり前すぎて、その価値がわからなくなっていたんです。率直に言って意外な提案でした」

 社長も含めた誰もが斬新な変化が起こるだろうと想像していたリ・ブランディング、しかし、その軸となったのは予想に反して「あるべき宝物を正しい姿に」という手法だった。

 

■リーガロイヤルホテルで「たからもの」巡り

大緞通に設置された金蒔絵柱。デザインは吉田五十八氏、制作は懸治朗氏による(提供:リーガロイヤルホテル)

 リ・ブランディングの目玉として、まずはメインロビーの絨毯が張り替えられた。大緞通(だんつう)『万葉の錦』である。これにより、1973年の「ロイヤルホテル(現・タワーウイング)」開業時の姿がより鮮やかになって甦った。
 また、平安時代を彷彿とさせる鳥模様がデザインされた金蒔絵柱も、訪れた人々の目を楽しませてくれる。

「こんなに天井が明るくなるなんて…吉田氏が当時、ここまで考えていたことを知り、鳥肌が立ちました」

 左居氏が語った吉田氏とは、数寄屋建築を近代化し、文化勲章受章者でもある建築家の故・吉田五十八氏のこと。大阪政財界の有力者がこぞって参画した「大阪の迎賓館プロジェクト」、その意匠設計を託された日本建築の大家である。

滝が見え、小川が流れるメインラウンジには21のシャンデリアからの上品な光が降り注ぐ(提供:リーガロイヤルホテル)

 吉田氏の狙い通り、当時から高い評価を得てきたのがこのメインロビー、そして奥のメインラウンジへと続く空間だ。

 ロビーを抜けた先にあるメインラウンジには、フロアを横切る「曲水の宴」を模した小川が流れ、約25万個のクリスタルガラスで造られたシャンデリア(制作:彫刻家・多田美波氏)の柔らかな光が包む、贅沢でゆったりとした時が流れている。

 そのメインラウンジで、吉田五十八氏の一番弟子でもある建築家・今里隆氏にお会いすることができた。

 「(吉田氏による)最初のスケッチを見たときは本当に驚きました。ロビーとラウンジが見事なまでに一つにまとまっている、日本調のこの空間が、私にとっての宝物です」

「リーチバー」で当時を懐かしむ今里隆氏。

 そう話しながら今里氏が案内してくれたのが、英国人陶芸家バーナード・リーチの着想を吉田氏が具現化した英国コテージ風のバー「リーチバー」だ。
 リーガロイヤルホテルが自身の魅力を発信するべくはじまった「たからさがし」は、もちろんここでも楽しめる。陶芸家の河井寛次郎、バーナード・リーチ、濱田庄司や、版画家の棟方志功といった民藝最高峰の作家たちのコレクションが多く飾られているからだ。

「ラ・ロンド」の全景。無数のガラス細工に目を奪われる。

 最後に、同じくリーチ氏の意向が取り入れられて設計された「ラ・ロンド」にも触れておきたい。
 数えきれないほどの細かいガラスタイル群が織りなす幻想的な円形空間もまた、様々なアートに精通している左居氏が絶賛、おすすめする珠玉の「たからもの」である。

 

■from OSAKA to THE WORLD

 ここまで、いくつかの「たからもの」を体感してきた我々はこう思った。
 匠たちの知恵と技によってつくられた贅沢な空間。ここでしか味わえない時間こそが「たからもの」なのではないか─。

 先人たちの想いが正しく受け継がれ、誇りとともにアップデートされるリーガロイヤルホテルのリ・ブランディングは、どうやら正しい。

「我々が目指す『リ・ブランディング』はこれで終わりではなく、ここから第二弾、第三弾と進めていかなければいけない」

 夕方、幻想的な光が注ぐメインラウンジのシャンデリア「瑞雲」の光を背に、䕃山社長は力強く語ってくれた。

 大阪から世界へ。
 クラシカルでありながらプログレッシブなリーガロイヤルホテルの物語は、令和の今、改めて輝きはじめている。

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