ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなどの肩書きを持つ筆者・小林久乃。本人が「幼少期からドラマオタクだ」と豪語するほど愛するテレビドラマの見どころについて語る。最新放送から、著書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(11月27日(水)発売/KKベストセラーズ刊)の読者にぜひ見てほしい恋愛、結婚、女性の生きかたに関する過去作まで、週1イチ更新。読めばドラマが見たくなる、何か自分に衝動が起きるコラムをどうぞ。

■恋い焦がれるような“才能”に人はついていくのだと、改めて

<あらすじ>

日曜劇場
『グランメゾン東京』
TBS/毎週日曜 よる9時放送


“3年前までパリのレストランで腕を奮い、三つ星獲得を目前とされていたシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)。とある事件をきっかけに店を閉めることになり、すべてのスタッフが解雇。日本に帰国する資金もなく、借金取りに追われているところに、三つ星で働くことを望む早見倫子(鈴木京香)と出会う夏樹。倫子は一瞬で彼の味に惚れ込み、日本でレストラン『グランメゾン東京』を開店させることを決意。事件によって解散に追い込まれた元スタッフたちを誘い、再び料理に熱意を投じる大人たちの勝負が始まった---”

 今回は現在放送中の『グランメゾン東京』(TBS系・毎週日曜21時放送)について。日曜日の21時といえば中年男子たちの心を掴んで離さない、銀行マンや会社員たちによる熱血ストーリーのドラマが、ここ数年の定番。ただちょっと女性視聴者には、高カロリー過ぎるのではないかと感じていた。そんな最中に、イケメンシェフの登場である。それも説明不要の平成が生み出したスターが主演。

 ドラマを見ていて面白いと感じたのは、ヒロイン自らが50歳だと言い切る鈴木京香さんを筆頭に出演者のバランスがいいこと。もちろん、木村さんが主演となれば、出演者のキャスティングも吟味が必要だ。でも若手のキラキラした女優がその位置を彩るのではなく沢村一樹さん、及川光博さん、尾上菊之助さんといった、いい中年感のある俳優陣が占拠していて安定感がある。単純に見やすいし、ストーリーを脳内で理解しやすい。私たちには敷居の高い、フレンチの世界を舞台に作られていく“大人の青春”が、見る側の食欲をそそるといったところだろうか。

 もうじき、中村アンさんや冨永愛さんらの出演時間が増えるそうなので、現状の安定感に対して、どう化学反応を起こすのか楽しみだ。

 それからもう最終回まで言い当てたくなるような、ハッピーエンド感。これは木村さんの存在が大きい。彼が出てくるとけして不幸で話は終わらないという、安堵がある。今回演じている夏樹は、料理の天才的な才能はあるのにアウトローなタイプ。ちょっと人たらしな一面もある。周囲からなんと揶揄されようと、一皿に盛る料理の可能性を信じていて、やがて非難していた人間も再び彼の元へと集まっていく。そんな内容を想像するだけで唾が出てきそうだ。

 他局で『絶対に失敗しない』と豪語する女医が数々の命を救うのなら、TBSでは、絶対的な技術を持ったシェフが人々の胃袋を幸せにする。そんな令和版の『水戸黄門』ストーリーが今秋は各所で面白いなあとしみじみ。