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連合軍で大活躍!アメリカが作った万能飛行艇・コンソリデーテッドPBYカタリナ

第2次大戦飛行艇物語③~蒼空と碧海をまたにかけた「空飛ぶ巨鯨」の戦い~

■万能飛行艇・コンソリデーテッドPBYカタリナ

コンソリデーテッドPBY-5Aカタリナ飛行艇。ご覧のように本機は飛行に際し、両主翼に設けられた補助フロートを翼端部に持ち上げて畳む。なお、カタリナには本機のように主脚を備えた水陸両用型と、これを持たない水上運用専門型の2タイプが存在した。

 戦間期のアメリカには、飛行艇設計の名門企業であるコンソリデーテッド社が存在した。同社は1933年にモデル28の社内名称で、洋上偵察、対潜哨戒、航空救難などの幅広い任務をこなせる万能飛行艇の設計を開始した。このモデル28は1935年3月に初飛行すると、海軍によってPBYの名称を付与のうえ制式化され、同年6月から量産に入った。このPBYという本機に与えられた略号は、Patrol(哨戒)の頭文字のPとBomber(爆撃機)の頭文字のBに、海軍がコンソリデーテッド社に割り当てた企業識別記号のYを組み合わせたものだ。

 アメリカよりも先に第二次大戦に参戦していたイギリスは、様々な兵器が不足する中でPBYの優秀性を認めて制式化。1941年前半から実戦に投入した。同空軍では伝統的に愛称を制式名称としており、本機にはカタリナの愛称を付与したが、その後、この愛称はアメリカ軍でも用いられるようになった。なお、カタリナ(Catalina)のスペルの前の3文字から、本機はキャット(猫)の渾名でも呼ばれている。

 イギリス空軍のカタリナは、実戦に投入されるとすぐに目覚ましい活躍を示すようになった。ドイツの沿岸輸送船団の動向を監視して味方の潜水艦やMGB(高速砲艇)、MTB(高速魚雷艇)を攻撃に向けて誘導したり、味方の輸送船団の護衛でUボートを多数撃沈したりしたのだ。特に遁走中に一時見失われたドイツ戦艦ビスマルクの発見は、本機のお手柄物語のひとつである。

 一方、太平洋戦争の勃発で参戦したアメリカのカタリナは、緒戦でこそパールハーバーのフォード島航空基地で、日本軍の攻撃を受けて飛ばずして何機かが犠牲にこそなったものの、日本側が大敗北を喫したミッドウェー海戦では、索敵飛行中に南雲機動部隊を発見している。おまけに同海戦に付随した戦いにおいて、レーダー搭載の本機がそれを使用して世界で初めて多発飛行艇による夜間雷撃を行い戦果を上げたりと、その優秀性を示す逸話は尽きることがない。

 興味深いところでは、機体全体を艶消し黒に塗装していたためブラックキャット(Black Cat)の愛称で呼ばれていた本機は、レーダーを用いた夜間偵察や夜間爆撃、脱出した航空機搭乗員に対する航空救難、オーストラリア海軍義勇沿岸監視員(コーストウォッチャー)や連合軍の特殊工作員の隠密の送り迎えなどに重宝された。

 原子爆弾の輸送に従事した重巡洋艦インディアナポリスが日本の伊58号潜水艦に撃沈された際、その生存者の救助に携わった1機のカタリナは、実に56名を救助。もちろん、全員を狭い機内に収容できるわけもなかった。だが当該の海域にはサメが多く、救助の手が伸びるまでの間に、沈没を生き延びた多くの生存者がサメに食われて亡くなっていた。そこで同機の機長は生存者を海中から引き揚げることにして、翼の上にまで彼らを乗せ、来援しつつあった水上艦艇が到着すると、彼らを引き渡したのだった。

 他にも、墜落した艦上機やB-29重爆撃機の搭乗員の救助などに大活躍したカタリナは、戦後も軍用のみならず、軍から民間に払い下げられた機体が、旅客機として島嶼の多いカリブ海やフロリダなどで重宝された。

【性能諸元】
全長:約20.0m
全幅:約32.0m
全高:5.7m
全備重量:約13500kg
最高速度:約300km/h
航続距離:約4300km
エンジン:プラット・アンド・ホイットニーR-1830×2基
武装:50口径機銃2挺、30口径機銃2挺、1000ポンド爆弾4発または航空魚雷2本など。
搭乗員数:10名
総生産機数:2661機

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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