■大河ドラマ史上ダントツの低さ

 

 再来年(2021)年のNHK大河ドラマが「青天を衝け」に決まった。主演は吉沢亮、描かれるのは渋沢栄一である。

 このニュースに、ホッとした人もいるのではないか。大河ドラマはまだ続くのだな、と。筆者などは正直、来年の「麒麟がくる」が最終作になってしまうのではという危惧を抱いていた。それもこれも、現在放送中の「いだてん~東京オリムピック噺~」の視聴率が大河史上ダントツの低さで推移しているからだ。

 ではなぜ「いだてん」は数字をとれないのか。早い話、それは面白いと感じる人が少ないからだ。そして、面白いと感じない人はどんどん離れていくから、面白くない理由をだんだん語れなくなる。それゆえ、面白くない理由は熱心に見ている人の感想から探すしかない。たとえば、こういうものだ。

「低視聴率の原因を勝手に分析するなら『マッチョなおっさん』に嫌われているのだと思う。マッチョ心、ときめかないだろうなあ、と思う。『権力争い』とかが好きで、『御意』とかが好きで、それで大河ドラマを見ているおっさんには無理だろうなあ、と」(矢部万紀子)

 この人は朝日新聞記者や「AERA」などの編集者を経て、フリーになり「朝ドラには働く女子の本音が詰まってる」という本を書いた、いわゆるフェミニスト系の女性だ。「いだてん」が人見絹枝を描いた部分には特に感動したようで「毎回泣けた。これを見ない人の気が知れない、とさえ思った」と激賞している。人見は女子スポーツへの差別や偏見と闘いながら日本女性初の五輪メダリストとなったアスリート。絶世の美女というわけでもないし、これまでの大河を支えてきた「マッチョなおっさん」たちにはさして興味の沸かないテーマだろう。

 もうひとつ、こういうのもある。

「大河ドラマが担っていたのは『わかりやすく新鮮な歴史の絵解き』である。そのつもりで見ている人にとっては、あまり受け取れるメッセージがない。(略)私は素晴らしいドラマだとおもう。ただ日曜8時NHKを見る視聴者と合ってないだけであ る。まあ合ってないのに敢えてやっているのが問題になっているのではあるが」(堀井憲一郎)

 TVウォッチャーを名乗ったりしている人だが、こちらは戦前のロス五輪を描いた回で日系人の誇りや叫びに触れ「大河ドラマではあまり感じたことのない感動」を味わったという。彼いわく「いだてん」は「ドラマを見慣れてる人向けのドラマなのだ」そうだ。

 とまあ、要はこれまでの大河と違ったものをやろうとしたところ、それを面白がる人が想定外に少なかったということである。深夜とか、BSだけでやっていたら、もっと評価されたかもしれない。したがって「いいドラマなのにな」とか「わたしは好きだけど」といった感じで自己完結的に残念がっている人には同情したくもなるのだが……。

「いだてん」支持者のなかにはそれだけで済ませられない人もいる。「これこそが真の大河ドラマ」「すべての日本人が見るべき」などと声高に主張し、ともすれば、これまでの大河を否定したり、見ない人を非難しているような人が。演出家のひとりである大根仁など、視聴率ばかり報じるスポーツ紙に対し「あ、興味も知識欲もないか!」(本人のツイッターより)と逆ギレしているほどだ。

 じつは、前出の矢部や堀井にもそういう傾向が見られる。たとえば、矢部は「マッチョなおっさん」を小バカにしつつ「これを見ない人の気が知れない」と言い、堀井は「ドラマを見慣れてる人」以外には不向きだと言う。そこにある「上から目線」がちょっと鼻につくのである。

 気になるのは、どちらもフェミニズムやら反差別、ひいては反戦といった、最近流行りのポリコレ的感覚を「いだてん」に見いだし、褒めていることだ。SNSでもそこを理由に、これまでの大河よりも上に見ている人が目立つ。だが、実際の視聴率はそれらの下にあるわけで、そういう現実が不満だったりもするようだ。