養子をもらって里親になることを望んでいる夫婦は大勢いる。しかしその多くは縁組がなかなか実現せず、いわゆる「待機里親」と呼ばれる状態だという。不妊に悩む方もそのなかにいるものの、養子縁組の里親を希望しても実現はなかなか難しい。その裏にはどんな事情があるのか本記事では紐解いていく。(『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』著:阪口源太、えらいてんちょう
 

 いま、子育てに関わるふたつの問題に、かつてないほど関心が集まっています。

 ひとつ目の問題は「少子化」です。その対策の必要性は多くの人が認識しているところでしょう。これからの社会と経済を支えていくためにも、生まれてくる子どもをいかに増やすかを考えることが大切なのはいうまでもありません。

 しかし、子どもの数がただ増えればいい、というわけではありません。生まれたその時から、子どもの人生が始まります。かけがえのない命が適切に、そして健やかに育っていくことのできる環境を十分に整えることもまた大切です。

 それこそが、もうひとつの問題です。

 近年、ニュースなどで「虐待」や「親のネグレクト(育児放棄)」の話題を目にすることが増えており、社会問題として大きな注目を集めています。

 これらの原因としては、親の無責任さや国の政策の遅れが論じられがちです。

 しかし実際は、そんなに単純な話ではありません。長年この問題に向き合ってきた私たちの目には、現状は「親も国もともに、問題解決に向けて努力をしている。しかし子どもにとって十分ではない」という状態に映ります。

 まだ幼く、右も左もわからない子どもたちにとって、十分に時間と愛情を注いで育ててあげることがどれだけ大切なことか、子育て経験のある方はもちろん実感されているでしょうし、そうでない方でも想像がつくことと思います。

 虐待やネグレクトなどの状況から保護を必要とする子どもの数は約4万5000人にものぼるとされています。

 現在、そのような子どもたちの多くは、「児童養護施設」という場所で生活しています。施設では、同じような境遇の、赤の他人である子どもたちと一緒に暮らすことになります。

 心身が健全に育っていく基礎となる幼少期に、家庭事情によって精神的ダメージを負った子どもたち。彼ら一人一人を24時間見守り、安心した気持ちで社会に送り出してあげられるようにと、絶えず努力されている施設職員の方々には心から敬意を表します。施設の環境も、現在では一般の住宅と比べてもほとんど遜色がないまでに改善されており、これは間違いなく国による大きな成果です。

 ところが、施設に預けられる理由となる虐待などの問題は、どれも同じ要因によって起こるのではありません。「父親に逃げられてしまった」「産んでも経済的に育てられそうもない」「親自身がかつて虐待を受けていた」など、ケースの数だけ事情が存在します。

 2019年1月に千葉県野田市で発生した児童虐待死事件では、父親からの暴力や叱責に母親が毎日苦しめられていた可能性があるとの報道がありました。その辛さを避けたい心理で、夫から娘への虐待を黙認してしまった結果、死に至らしめてしまったのです。

 親は、それぞれの置かれた環境下で我が子の養育に取り組みます。そのなかで精神的に追い詰められてしまった結果、虐待などの行為に行き着いてしまうケースが少なくありません。

 産み親を責めるのは簡単ですが、賢明とは言えないでしょう。それでは問題の根本的な解決にはなりません。

 そうでなく本当に考えるべきは、元の家庭環境でトラブルが起きた場合でも子どもたちが安心して育つことができる、「第二の環境」を充実させることです。そのような取り組みが充実すれば、結果的に少子化の改善にもつながるはずです。

 最も大切な「子どもを守る」「子どもを育てていく」視点から考えると、現在のシステムではどうしても限界があります。

 具体的にどのような限界があるのか。そしてその限界を乗り越えて、子どもたちにとってより良い環境を整えるためには、何をすれば良いのか。本書ではそれらを考察し、有効かつ有力な解決策を示したいと思います。