自ら味わった「待機里親」の無念

 私はこれまで、NPO団体を立ち上げ、養子縁組のあっせんに取り組んできました。そこには「小さな子どもを守り、より安心して育っていける新しい生活につなげていきたい」という思いがありましたが、その原動力になったのは私自身の経験でした。

 私もかつて「不妊」に苦しみ、その結果養子を望み、児童相談所や民間のあっせん団体を巡っていました。

 児童相談所には一年間で7、8回通いました。平日の仕事の時間帯を妻とともにやり繰りして通うのは大変でしたが、この章のストーリーで紹介した夫婦と同じく当初は「何とかなるだろう」と楽観的な心持ちでいました。「世の中には恵まれない子どもたちがたくさんいる。そんな子どもの親になりたいと決意したのだから、自分たちは児童相談所にとっても喜ばれるはずだ」と、勝手に思い込んでいたからです。

 ところが、現実は正反対でした。

「あなた方のように子どもを望んでいる方は大勢います。1人の赤ちゃんに対して何百人という方が順番待ちをしているんです。養子縁組の里親を希望しても実現はなかなか難しいので、養育里親になられてはいかがですか? それにはまず児童相談所の養育里親研修を受けて下さいね」

 というのが、児童相談所の職員の反応だったのです。

 児童相談所に薦められた「養育里親」は、あくまで一時的に子どもを預かる制度です。国からの手当などはありますが、「本当の親子」として認められるわけではありません。

 私が望んでいたのは、子どもとの恒久的な親子関係以外のなにものでもありませんでした。それでも職員の方の言葉通りに養育里親研修を受けましたが、結局宣告されたのは、初めの頃にも聞いた「特別養子縁組を希望するご夫婦は大勢います。そう簡単には順番は回ってこないですよ」という言葉だったのです。