「水道の危機」が叫ばれ、これを救うには「水道の民営化」が有効な手段だと言われる。だが、実は、世界各国で進んでいる「水道民営化」は、期待ほど成果があがっていないことをご存知だろうか。世界屈指のレベルのように感じている日本の水道システムは、実は危ういのだろうか? 日本の水道の歴史と、その水準の実態を見ていこう。(『日本の「水」が危ない』六辻彰二 著より

【世界屈指の水道システム】

 

 世界各国で「水道民営化」が実施され、その多くで期待されたほど成果があがっていないにもかかわらず、日本政府は水道事業への民間企業の参入を推し進めようとしている。そこで強調されるのが「水道の危機」だ。つまり、危機を救う手段として「水道民営化」の有効性が唱えられているのだが、果たして日本の水道システムはどれほど危ういのだろうか。「水道民営化」という解決策の良し悪しを考えるとき、まずその大前提として、日本の水道そのものを改めて見直す必要がある。

 まず、日本の水道の歴史を簡単に振り返ってみよう。水道は近代以降の日本の歴史の一側面であり続けた。日本初の近代水道は、開国から間もない1887年(明治20年)に横浜で敷設された。これは外国人の到来とともに持ち込まれたコレラなどの感染症の対策でもあった。それ以来、函館、長崎など港湾都市を中心に進んだ水道の敷設は、やがて東京、大阪などの大都市にも至った。

 しかし、第二次世界大戦以前、人口の多くを占めていた農村ではその限りでなく、戦後の1950年段階でも全国の水道普及率は約26%にとどまっていた(厚生労働省)。これが一気に進んだのは高度経済成長期で、水道普及率は1960年に約53%、1970年には約81%と急激に伸びていき、バブル崩壊の直前1990年には約95%にまで達した。

 こうして普及した日本の水道は、そのコストパフォーマンスの高さで世界でも屈指のレベルにある。これを料金、アクセスのしやすさ、サービスの三点からみていこう。