NHKアナウンサーという局の看板を背負いながらも薬物事件起こして逮捕。仕事も信用も失い自責の念から鬱に。ようやく依存症の回復施設に繋がった。そこで見えてきたのは、自分がいかに依存症に対する偏見にまみれていたかということだった。(雑誌『一個人 2019年10月号』より)

薬物事件で何もかも失う

塚本堅一氏

 私は2016 年の1月10日に違法薬物の所持・製造の疑いで逮捕されました。

 私自身が使っていたのは「ラッシュ」と呼ばれるセックスドラッグの一種です。油性ペンのような揮発性のある匂いの液体を鼻から嗅ぐと、数分間高揚し、強いお酒を飲んだような軽い酩酊感覚がやってきます。セックスドラッグなので、果てればおしまい。後腐れなく楽しめる、ちょっとしたご褒美感覚でした。1990年代〜2000年代の中頃まで流行していたもので、アダルトショップだけでなく、街の雑貨屋さんでも普通に売られていたほど人気のあるものでした。ところが、ゲートウェイドラッグ(他の薬物の入り口)に繋がることへの懸念などから2006年11月、ついには違法薬物に指定されます。

 そもそも、なぜ私がドラッグなんかに手を出したのか。ありふれた理由かも知れませんが、ストレスとうまく付き合うことができませんでした。一見、仕
事も人付き合いも、それなりに上手くこなすものの、絶対人に弱みを見せられない屈折した感情を常に抱えていたのです。一日の終わりに、ストレスを和ら
げるためにコンビニでご褒美スイーツを買う感覚で、「合法」を謳った怪しいサイトから購入しました。勿論、そのサイトで売られていたものは「合法」で
もなんでもなく、私は逮捕され、職も社会的信用もそれまで築いた全てを失います。

偶然見つけた薬物報道ガイドライン

 自分で犯した失敗は、自分でなんとかしなければと、次の人生を模索しました。アルバイトをしながら、ハローワークにも通い続けます。でも、面接で前
職の説明をすると、どうしても薬物事件がついてくる。人生の一部を消してしまいたい。でもそんなことは、到底無理ですから、いっそ自分が消えてしまっ
た方がいい。時間が経てば、状況は変わると思ってやり過ごしましたが、どうにもダメでした。逮捕から1年が過ぎる頃から、外出ができなくなったり、人に会えなくなったり、どんどんできないことが増えていきます。あ、これはもう自分の力ではどうにもならないのかも知れない。思考の効かない頭でぼんやりそんなことを思っていた時に、偶然「薬物報道のガイドライン」という記事を見つけました。