■コルトM1911A1ガバメント

第二次大戦中に生産された典型的なM1911A1の軍用モデル。全体の表面処理はブルーイングではなく、より耐久性の高いパーカライジングが施されている。

 アメリカ軍が1873年に制式化したシングルアクションのコルト・シングルアクション・アーミー回転弾倉式拳銃(リヴォルヴァー)、いわゆる「西部劇の拳銃」として広く知られるピースメーカーに代えて、1889年に制式化(海軍が先行)したのが、前者よりも速射性に優れたコルト・ダブルアクション・アーミー・リヴォルヴァーだった。だが、同銃に使う.38ロング・コルト弾は、フィリピンでモロ族に対する暴動鎮圧に際して威力不足を露呈した。麻薬を服用し興奮、感覚も麻痺した状態で民族刀を振りかざし突っ込んでくるモロ族の戦士に対して、2発、3発と命中させても倒すことができず、中にはシリンダー内の6発全弾を撃ち込んでも突進をやめずに、相手のアメリカ兵を斬り殺してから自分も息絶えるという猛者もいたのだ。

 一方で、この暴動で一世代前のシングル・アクション・アーミーに使われている.45ロング・コルト弾の大口径で重い弾丸のほうが、被弾者を行動不能にする能力が高いことが判明した。

 そこでコルト社は、今日「銃器設計の天才」として知られるジョン・ブローニングが1892年に設計した自動装填式拳銃(オートマチック)を基に、威力の大きな.45ACP弾を使用する新型軍用拳銃を開発。本銃は、ルガーやサベージ・モデル1906も参加したアメリカ軍の次期軍用拳銃選定トライアルで最優秀と認められて1911年に制式化され、M1911の制式番号を付与された。

 そしてこのM1911は、第一次大戦の過酷な戦場で信頼性の高さを示すと同時に優れた威力を発揮。そこで、より使い勝手を向上させるべく1926年に小改良が施され、この改良バージョンがM1911A1として制式化され、その後の主流となった。

 軍用拳銃に求められる堅牢性、操作上の安全性、大威力という三つの要素をすべて備えた本銃は、いつしか「ガバメント(政府という語から転じて官給品の意)」のニックネームで知られるようになったが、ときには「ハンドキャノン(「手持ち大砲」の意)、「45(フォーティ・ファイブ)オート」などとも呼ばれた。

 アメリカ軍は、M1911A1と交代させる目的で1985年にM9(市販名ベレッタM92F)を制式化。一時は74年間もの長期間にわたってアメリカ軍制式の座に在った本銃もいよいよ退役かと思われた。ところがM9にはいろいろと問題もあり、結局、その後も一部でM1911A1が現役に残されているだけでなく、本銃をベースにして海兵隊向けのMEUモデルが新たに開発されるなど、制式採用以来100年を超えた現在も、第一線で使い続けられている名銃である。

 ちなみに、黒澤明監督の傑作「用心棒」をギャング映画化した「ラストマン・スタンディング」では、名優ブルース・ウィリス演じる主人公ジョン・スミスが、ガバメントの2挺拳銃で激しく撃ち合うシーンが見ものだ。

 

【データ】
製造国:アメリカ
製造開始年:1911年
全長:21.6cm
銃身長:12.7cm
重量:1100g
装弾数:7発+薬室に1発
使用弾種:.45ACP弾
ライフリング:6条/左回り