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柏井壽さんが語る京都・おばんざいの流儀

月刊誌「一個人」4月号「京都で、飲む」特集企画②

そもそも、おばんざいとは?

 

――日常食のはずが、おばんざいを売りにするお店もたくさんありますが。

 30、40年前まではおばんざいを売りにする料理屋などなかったのですが。京都人にとってはかなり違和感がありますが、〝京都名物〟というビジネスモデルが完全にできてしまいましたね。「京野菜」「京料理」などと同じく。

 おばんざいは家の料理。たとえおから、芋棒など同じ料理名でも、玄人の料理人が作るものはおばんざいではないし、京都人として筋を通している店は、家で作るご飯のおかずとは一線を画す姿勢を貫いています。家では少しのおかずでご飯がたくさん食べられるように濃いめの味付けですが、料理屋のは〝酒の肴〟。酒に合うよう薄味なんですよ。

――他の郷土料理にはないおばんざいのエッセンス、京都らしさを感じる点とは何でしょうか?

 京都ならではの料理は、歴史的背景と独特の風土が合わさって生まれました。特に「出会いもん」と呼ばれている料理は、そのルーツを思いながら食べると「なるほど」と京都人の知恵に感心するのではないでしょうか

 例えば、江戸時代中期に九州産の海老芋と北海産の真鱈を干した棒鱈が京都で出会って「芋棒」という炊き合わせになりました。海老芋と棒鱈を別々に炊いたのではコクや旨みはでないそうですが、この辺りに気がつくのが京都人のセンスかもしれません。

 北前船で北海道から運ばれてきた身欠き鰊も昆布と炊いたり、茄子と炊いたり、あるいは蕎麦の上に載せたり。棒鱈も鰊も昆布も乾物ですが、こういった「いつもあるもの」と季節のものを京都人はうまく使っています。

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