【脳梗塞の出版局長】麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方【真柄弘継】連載第6回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【脳梗塞の出版局長】麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方【真柄弘継】連載第6回

【新連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第6回〉


「まさかオレが!? 脳梗塞に!」ある日突然人生が一変。衝撃の事態に見舞われ仕事現場も大混乱!現役出版局長が綴った「半身不随から社会復帰するまでのリアル奮闘日記」。連載配信前から出版界ですでに話題に!だって名物営業マンですから!

誰もが発症の可能性がである「脳卒中」。実際に経験したものでないと分からない〝過酷な現実と絶望〟。将来の不安を抱えながらも、立ち直るべくスタートした地獄のリハビリ生活を、持ち前の陽気さと前向きな性格でもって日々実直に書き留めていったのが、このユーモラスな実録体験記である

リハビリで復活するまでの様子だけでなく、共に過ごしたセラピストや介護士たちとの交流、社会が抱える医療制度の問題、著者自身の生い立ちや仕事への関わり方まで。 克明に記された出来事の数々は、もしやそれって「明日は我が身!?」との声も!?  笑いあり涙ありの怒涛のリハビリ日記を連載で公開していく。

第6回は「麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方」

出版局長の明日はどっちだ!?  50代働き盛りのオッサンは必読!


脳梗塞発症前の出版局長・真柄弘継氏。「いかにして本を読者に届けるか」。日々営業販促に邁進する各書店員さんや各取次担当者さん、各出版社営業部員たちとの交流会の幹事として活躍も。

 

第6回

麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方

 

◆焦燥感や不安感などの負の感情が機能していたら……

 

◾️9月7日日曜日

8月8日に自立2[注]となり、トレーニングルームのマシンで自主トレが可能となった。

体力無視で自主トレをしたせいか、初めて倦怠感というものを体験。

その後も自分の体力を過信。

リハビリへ影響が出るような疲れを何度も味わったのだ。

セラピストさんや介護士さんから、休息はとても大切なことと諭される。

そこで8月24日の日曜日から週一の休み(朝の自主トレとリハビリ除く)を設けたのだ。

 

休息日をお伝えする前に、諸々の不便なことや時間の過ごし方の難しさなど説明しよう。

私は身体障害者となったので、何をするにも健康な身体の頃の10倍は時間を要する。

着替えも、トイレも、何かを取ったり運んだり閉まったり、すべてにおいて時間がかかる。

気軽に何かをする、ということが出来ない。

だからこそリハビリで少しでも出来るようになるための訓練をしている。

けれどもリハビリをどんなに頑張っても、健康な身体の頃のようには出来ないのである。

脳梗塞となり入院して、そこからリハビリテーション病院に転院。

150日(私はカレンダーの関係で148日)を人生の夏休みなどと言ってはいる。

けれど下手したらこのまま人生の終焉となる可能性もあるのだ。

そうならないためにリハビリで、まずは歩きを取り戻す。

どこまで実現するか分からないけど、腕と手先の動きを取り戻し、限りなく健康な頃の身体にしたいのだ。

頭の障害や後遺症はなかった。

冷静な判断をすれば、元に戻すのはかなり難しいことなんだと理解出来る。

もし、焦燥感や不安感などの負の感情が機能していたら?

たぶん、発狂もしくは無気力からの回復困難な身体になる未来が待っているのだろう。

自分でも驚くほどの忍耐力だ。

4時に起きて自主トレが終わり、着替えて洗濯物を運ぶ。

それからラウンジへ行きメールや競馬の予想。

6時過ぎたら食堂へ。

水を飲んだりしてウロウロ。

室内で杖を使うのを許されてからは、自室に戻り片道3メートルを往復で5回ほど。

トイレへも杖を使っていく。

7時になったら食堂で新聞を読み、また自室へ戻って杖で往復5回ほど。

8時の朝食を済ませたら自室で歯磨きと髭剃り。

8時45分に最初のリハビリがあれば御の字。

なければ杖を使って部屋の中を往復しまくる。

リハビリの合間に時間があればマシンで自主トレ。

12時にお昼ごはん食べたら次のリハビリまたは入浴まで何もなく、時間の過ごし方で悩む。

リハビリも早いと3時には終了してしまうことがある。

マシンをしても時間が余るのだ。

なんとか時間を遣り過ごして18時に夕食。

終われば19時15分の翌日のスケジュール発表まで時間を遣り過ごす。

19時30分にはベッドで就寝の準備。

ここからは寝たり起きたり。

眠ったかと思ったら寝返り出来ない身体に脳が反応して覚醒。

これが何度も続き地味に辛い。

23時頃にようやく寝入るも、4時まで眠れるのは稀で、2時か3時にトイレで起きる。

そして4時になり、また1日が始まる。

[注] 
自立 
リハビリの自立度は、**FIM(機能的自立度評価法)や「障害高齢者の日常生活自立度」**など、いくつかの評価方法があります。 この日記では病院の中での評価基準を基にしています。 
自立1=車椅子で2階フロアは自由に移動できる。 
自立2=車椅子で病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。 
自立3=杖で2階フロアを自由に移動できる。 
自立4=杖で病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。 
自立5=杖無しで2階フロアを自由に移動できる。
 自立6=杖無しで病院の1階と5階のフロアを自由に移動できる。

次のページ圧倒的に何もすることのない無為な時間をどう過ごすか?

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

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