葛西紀明53歳、9大会目のオリンピックへ挑戦!「スリップしない」今考えていることはただ一つ

6月、都内で行われたラジオ番組の収録に、レジェンドスキージャンパー・葛西紀明(53)が姿を見せた。来年はミラノコルティナで冬季オリンピックが開催されるが、自身9大会目のオリンピック出場に向けてメラメラと燃えていた。
メンタル面も、コンディションも上々のよう。 逆に今突き詰めたいのは「心技体の技の部分です」と葛西。具体的には「テイクオフの際にスリップしない」ことだという。
スリップとは、ジャンプの踏み切りの瞬間、板が滑ってしまうこと。これだと地面にパワーが伝わらず、飛距離が出ない。専門的な話だが、葛西は氷上での幅跳びに例えて説明してくれた。
「スケートリンクで思いっきり幅跳びしようとすると滑りますよね。あの状況がジャンプ台で起きるんです。5~6割の力で跳べば滑らない。でも100%に近づけるほど強くなる」
そのギリギリのバランスを探っていく。スピードが出るポジションと、スリップしない踏み切りができれば、「(ライバルであり弟子の)小林陵侑はチョロいです」と笑った。
このスリップ、スキー選手にとっては鬼門なようで「一度スリップの周期に入ると飛べなくなるんです」「それで飛べなくなって辞める選手がほとんどです」と語る。
葛西自身も平昌オリンピックからの4年間は、スリップの周期に入り込んでしまい、前回の北京オリンピック出場を逃してしまった。そこからは「諦めが肝心かな」と、一旦気持ちを切り替えていったという。
葛西はこれから、スロベニアで合宿に臨むという。
「日本では練習本数が稼げないんです。スロベニアなら天候も安定して、世界最強チームと一緒に飛べる」
日本より練習環境に恵まれた地でもう一度スリップしない飛び方を確認していく。
「どうやったらスリップしないジャンプに近づけるか。それができればW杯のトップに行けるし、オリンピック出場も見えてくる」
取材・文:BEST T!MES編集部