JR西日本の路線で最後まで乗り残したのが、小野田線であった。山口県へはSLやまぐち号の取材で何回も出かけているのに小野田線は乗らずじまいだった。宇部線は1時間に1本ほどの割合で電車が走っているのだけれど、小野田線の本数は少なく、雀田駅から長門本山駅に枝分かれしている支線に至っては、朝に2往復、夕方に1往復しか走っていない。とてもついでに乗りに行ける状況ではない。というわけで、一大決心をし、小野田線に乗るのを主目的とする鉄道旅に出かけた。

黄色い電車がたむろする宇部新川駅構内

 山陽新幹線の新山口駅から宇部線に乗り換えて、宇部新川駅へ。50分近くかかるとは思っていなかった。海が見える区間もあったけれど、ほどほどに混みあったロングシートの車内では、車窓を楽しむことはできない。荷物もあったし、やや窮屈な思いをしての乗車だった。

クモハ123形電車

 とりあえず駅近くのホテルに荷物を置き、身軽になって再び宇部新川駅へ。2面3線のホームのはずれには留置線が何本かあり、黄色い電車が何両も停まっていた。2両編成の105系電車のほかに、クモハ123形という1両で走る電車も見かけた。もっぱら小野田線で走っているのだが、荷物電車を改造してできたユニークな車両で、窓枠の配置など車両によって微妙に異なっているのが興味深い。全国でも、今やここでしか走っていないとあって珍しい電車なのだ。
 これから乗車するのは、小野田線に直通する電車で、途中の雀田駅で長門本山駅に連絡している。宇部新川駅のホームは、1番線と3番線、4番線という表示があり、2番線ホームはない。1番線ホームと3番線ホームの間に線路が3つ並んでいるので、それに合わせてのことであろう。その4番線が小野田線乗り場で、クモハ123形の2という車両がホームに横付けとなった。これに乗れるのだろうと思っていたが、ドアは開かず、しばらくすると小野田方面へ向けて発車していった。不思議に思いながら待っていると、別のクモハ123形(6という表示があった)がホームに入ってきて、今度はドアが開いた。オールロングシートの車両である。学校帰りの高校生やビジネスパーソンなどでほぼ満員となって発車。隣駅の居能から宇部線と分かれて小野田線に直通する。

厚東川を渡る

 左へ大きくカーブすると厚東川を越える。水を満々とたたえた川を渡るのは中々にスリリングだ。田園地帯を走り、妻崎駅、長門長沢駅に停まると、次は雀田駅。初めてなので駅の順番が分からず、やや聞き取りにくい車内放送に耳をすませ、窓から見える駅名標を確認しつつ緊張しながら到着を待った。夕方の長門本山行きに乗るには、この電車しかないので、間違えると、明日またやり直さなければならないのだ。
 雀田駅に到着。思った以上に多くの人が下車した。ホームの反対側には長門本山行きの電車が待っている。ボタンを押してドアを開けて車内に入ると、すでに何人かが座っている。先に小野田方面からやってきた電車から乗り換えたのだろうか。車内の銘番をチェックすると、クモハ123の2とある。先ほど宇部新川駅で見かけた電車だ。回送で雀田駅に先に到着したようだ。回送で向かうくらいなら、宇部新川駅から乗せてくれてもよさそうなものだが、そうもいかない事情があるのだろうか?

長門本山へ向かう支線

 時間になると長門本山行きは発車。小野田線の本線(小野田方面へ向かう線路)が右へカーブしているので、長門本山へ向かう支線は直進である。主客逆転のような状況だ。
 草茫々の単線の線路を揺れながら進む。線路際は雑草が生い茂ってるけれど、少し離れたところには住宅が点在している。浜河内駅に停まると、次はもう終点の長門本山だ。雀田駅から僅か5分。宇部新川駅からは、雀田駅での乗換時間3分を含めても20分のミニトリップだった。

長門本山駅

 1日3往復しか走らないので、さぞかし何もない場所かと思ったら、終点長門本山駅周囲も住宅地だった。駅はホームが1本、線路が1線だけの簡素な駅で、線路際だけは草生していたけれど、よく見まわすと車窓から見ていた以上に住宅が点在している。

金網の向うは周防灘

 線路の行き止まりの先には、道路があり、渡るとその先には周防灘の海が広がっていた。高い柵が邪魔して写真を撮るのが難しいけれど、淋しいというよりは静かで落ち着いた場所だった。
 利用者は結構いて、ほとんどの人は地元の人らしく、電車から降りると三々五々自宅と思われる目的地に散って行った。駅周辺にたむろしているのは鉄道ファンと思われる人種で私を含めて4人。何でもない平日の夕方にこれだけ集まるのはむしろ常識では考えられない。それだけファンにとって魅力的な駅ということだろう。
 小さな屋根付きの待合室があるだけで駅舎もない無人駅。トイレもないけれど、電車にトイレがあるので用を足すには困らない。20分停車した後、宇部新川行きとなって折り返したが、駅で写真を撮ったりしていた4人が全員乗り込み、それ以外の乗客はいなかった。
 宇部新川行きとは言っても、雀田駅で38分も停車し、その間に小野田発の電車がやってくるので、少しでも早く夕飯を食べたいので、そちらに乗り換えた。これもクモハ123形の1両のみで、この界隈にいると希少価値の電車に乗るのが日常の光景になるようだ。空いていたので、ゆったりと座ることができ、再び厚東川を渡って宇部新川に戻ってきた。

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